ガス小売全面自由化へ動きが加速、電力と同様の競争環境を整備:法制度・規制(3/3 ページ)
実施まで6カ月余りになった都市ガスの小売全面自由化に向けて急ピッチで準備が進んでいる。政府は電力と同様に営業行為を規定したガイドラインを整備するのと合わせて、大手のガス会社を対象に料金面の規制を加える方針だ。電力会社は既存の契約条件の緩和などを求めながら参入に備える。
電力3社が競争環境の整備を求める
政府は電力と同様に都市ガスの市場でも健全な競争を促進するため、小売全面自由化に向けてガイドラインを整備する。ガイドラインは2種類を用意する方針だ(図7)。1つは需要家を保護するための「ガスの小売営業に関する指針」で、料金の説明方法や契約形態を規定する。
電力・ガス取引監視等委員会が9月2日に公表した素案を見ると、電気事業者を対象に策定した「電力の小売営業に関する指針」と同様の構成になっている。需要家に対する情報提供から契約解除に至るまでの一連の業務を対象に、「望ましい行為」と「問題となる行為」を規定する内容だ(図8)。
たとえば電力などとセットで販売する場合に、料金割引や契約解除の条件を適切に説明しないと、「問題となる行為」とみなされて業務改善命令・勧告の対象になる。このほかにガス特有の規定として、マンションやオフィスビルに一括で供給する「一括受ガス」の禁止などを加える。
もう1つのガイドラインは「適正なガス取引についての指針」で、事業者間の取引のあり方を規定するものだ。大口の需要家向けにガスの小売を自由化した1995年から5年後の2000年に初めて策定した。その後も数回にわたって内容を見直してきたが、小売全面自由化に合わせて現行の内容を再び改正する(図9)。
改正後のガイドラインには、新規参入の事業者が既存のガス会社のLNG基地を利用する場合の料金設定に関する規制などを盛り込む予定だ。LNG基地を運営するガス会社の製造部門は自社の小売部門と第三者の小売部門に対して、同一の利用条件の場合には同一の料金を設定しなければならない。
さらに需要家と結ぶ長期契約や中途解約の違約金についてもガイドラインで規制することを検討中だ。電力の場合には「適正な電力取引についての指針」(2016年3月改正)の中で、不当な解約制限などを「問題となる行為」に規定している。
東京電力・中部電力・関西電力の3社は電力・ガス取引監視等委員会の会合に参考資料を提出して、ガス会社の問題行為を指摘した。需要家に提供するリース機器の契約条件に新規参入を阻害する内容が含まれているためだ(図10)。
自由化を前に電力会社とガス会社の攻防が激しさを増していく。委員会では今後の会合を通じて、2017年3月までに2つのガイドラインの内容を確定して公表する。既存のガス会社に対する規制をどのくらい盛り込むかによって、4月から始まる自由競争の進展度は大きく変わってくる。
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