燃えにくくて軽い太陽電池、電気自動車の屋根や住宅の壁にも:蓄電・発電機器(2/2 ページ)
太陽電池の研究開発を担う産業技術総合研究所が、難燃性で軽量の太陽電池モジュールを開発した。太陽電池を保護する封止材にシリコーンゴムを採用したほか、表面をガラスから高分子フィルムに、裏面をアルミ合金で構成して重さを約半分に抑えた。車載用や住宅用の製品開発へつなげる。
鋼球を落としてもシリコーンが衝撃を吸収
封止材のシリコーンや表面材の高分子フィルムは燃えにくいため、裏面材のアルミ合金と組み合わせてモジュール全体の難燃性を高めることができる。木製の火種を使って建築基準法に基づく燃焼・飛び火試験を実施したところ、従来型のモジュールと比べて新開発のモジュールは火種の影響が小さかった(図4)。
従来型のモジュールでは表面のガラスが割れたほか、EVAによる封止材や裏面のバックシートまで燃焼した。一方の新モジュールは火種の灰などが表面に付着した程度で、シリコーンの封止材、高分子フィルムの表面材、アルミ合金の裏面材に大きな変化は生じなかった。
さらに衝撃に対する強度を調べる鋼球落下試験も実施した。重さが225グラムの鋼球を高さ1メートルからモジュールの表面に3回落下させて、太陽電池の出力を測定する試験だ。従来型のモジュールは太陽電池を構成するセルの一部が割れて、出力は87%まで低下した(図5)。
新モジュールには破損がほとんどなく、出力も99%で影響は小さかった。シリコーン封止材が鋼球落下の衝撃をやわらげる効果があったと産総研では評価している。太陽電池モジュールの破損状態を評価するために、外部から電流を加えてセルの発光状態を観測するエレクトロルミネセンスの画像を比較しても両者の違いが明確に出た。
このほかに荷重試験や高温・高圧試験(温度85℃、湿度85%)を実施した結果、新モジュールは88キログラムの荷重に耐えられる強度があり、3000時間にわたる高温・高圧状態でも出力が低下しなかった。今後さらに信頼性を評価する各種の試験を続けながら、モジュールの構造や部材の最適化を進める予定だ。
軽量で難燃性と耐衝撃性が高いことから、電気自動車の屋根に搭載する太陽電池モジュールや、住宅の建材と一体型になった太陽電池モジュールの製品化を想定している。
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