ネガワット取引でデマンドレスポンスが拡大、市場規模は20倍以上に:電力供給サービス(2/2 ページ)
需要家が節電した電力を事業者が買い取り、その電力を他の需要家に供給するネガワット取引。節電した電力を売買できるというこの新しい市場の設立に向けて、制度設計が進んでいる。それに伴い注目されているのがインセンティブの付与などと引き換えに、需要家側が電力の使用を抑制する「デマンドレスポンス」だ。調査会社の富士経済は、デマンドレスポンスの関連サービス市場の展望をまとめた。
3つのDRサービス、それぞれの市場展望
調査では「電気料金型DRサービス」「ネガワット取引サービス」「アンシラリーサービス」それぞれの市場展望についても分析している。電気料金型DRサービスについては、2016年4月に電力の小売全面自由化が始まったことで、さまざまな新料金プランの発売が相次いでいる。電気使用量の多い需要家やオール電化住宅、エコキュートなどを導入している需要家を対象に市場形成が進み、2020年には時間帯別料金プランを中心とし、市場規模は100億円を突破すると予測した。
さらに30分単位で電気使用量の計測できるスマートメーターが普及することで、より多様なプランの登場が予想される。2025年以降、国内人口の減少に伴い住宅分野の電力契約数は減少する見込みだが、2020年の料金規制撤廃を皮切りにピーク別料金をベースとしたプランや、HEMS、太陽光発電システム(PV)、エネルギー貯蔵システム(電気自動車や蓄電池、エコキュート、エネファームなど)を連携させ、「エネルギーの見える化」や制御機能を活用したプランなどが発売されることで市場拡大が続く。こうした影響で、電気料金型DRサービスの市場規模は2030年に300億円まで拡大するとしている。
ネガワット取引サービスは、特定規模電気事業者の多くが供給力不足に直面しているため、サービスに対するニーズは高いとしている。しかし、現時点の安価なインバランス料金はDRアグリゲーターにとってビジネスメリットに欠けると指摘。そのため静観するDRアグリゲーターも多く、実質的な市場の立ち上がりは2018年以降としている。
その後は2020年には送配電部門の分離により、小売電気事業者には供給力確保が求められ、インバランスに対するペナルティも厳しくなると見込まれる。そのためネガワット取引のニーズが高まり、同時にインバランス料金が上昇することで市場は拡大していくと予想した。さらに2022年頃には将来の予備力を確保するため供給力取引する容量市場の創設も予想され、DRアグリゲーターなどの参入が増えるとしている。
アンシラリーサービスは、2017年4月から送配電事業者が公募により調整力調達を開始することで市場が立ち上がり、2020年のリアルタイム市場の創設を機に拡大が本格化すると見込んだ。現在、日本国内では複数の蓄電池を統合制御し、電力需給の調整に活用する実証試験が活発になっている。アンシラリーサービスは需要側への蓄電池の普及と、こうした蓄電池の統合制御技術との組み合わせ、さらに複数の需要家側のエネルギーリソースをアグリゲーションするビジネスが立ち上がることで拡大が期待できるとしている。
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