再生可能エネルギーを使う水素製造装置、福島県の研究所へ:蓄電・発電機器
産総研と清水建設は再生可能エネルギー発電設備の余剰電力を活用し、水素を製造・貯蔵するシステムの研究開発を進めている。このシステムに仕様する水素製造装置を日立造船が受注した。2017年1月に産総研の福島再生可能エネルギー研究所に設置される。
日立造船は、このほど産業技術総合研究所(産総研)向けに固体高分子型の水電解水素発生装置「ハイドロスプリング」を受注した。産総研と清水建設は、再生可能エネルギー発電設備の余剰電力を水素に変換して貯蔵し、必要な時に水素を利用できるエネルギーシステムの研究開発を始めている。
それに伴い、同システムの重要な構成要素となる屋外設置型の水素発生装置の設計、製造および試運転などに関する一般競争入札を行い、その結果、日立造船製造のハイドロスプリングの採用が決まった。今回導入するのは発生量5Nm3/h(ノルマル立方メートル/時)のタイプで、納期は2017年1月。産総研の福島再生可能エネルギー研究所に設置される(図1)。
ハイドロスプリングは、太陽光および風力発電による電力で水を電気分解することにより、オンサイト/オンタイムで水素を製造することができ、ボンベの運搬・保管・交換が不要のため安全性と利便性が高い。また、固体高分子型電解槽採用により高効率に水素を製造する。さらに風力発電、太陽光発電などの再生可能エネルギーは気象や自然条件により出力が常時変動するが、そうした急激な電力負荷変動に追従するなど、負荷変動追従性に優れている。
この他、純度99.999〜99.9999%、露点(大気圧換算)マイナス50〜70度の高品質な水素が製造可能。換気機能を備えた、12フィートのコンテナ内部に機器を構成することで屋外設置できる、などの特徴がある。
日立造船は1974年、当時の通商産業省工業技術院によるサンシャイン計画から一貫して水素発生装置の開発に取り組んでおり、将来の水素社会を見据え1時間当たり200Nm3の水素を製造できる大型の固体高分子型水電解水素発生装置の開発も進めている。
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