IoTを重要項目に、日本の新しい省エネ技術戦略が決定:法制度・規制(2/2 ページ)
NEDOは日本の省エネ関連技術の開発ロードマップを示す「省エネルギー技術戦略2016」を発表した。高効率な火力発電設備や再生可能エネルギー電源の協調制御など、エネルギーの上流分野の技術革新に向けた項目を新設。さらにエネルギーマネジメント技術などについて、昨今のIoTの進展や第三者による省エネビジネスの発展を視野に、位置付けの見直しを行っている。
上流領域でも技術革新を推進
新設の「エネルギー転換・供給」部門の中で、重要技術として特定された「高効率火力発電・次世代送配電技術」と「コージェネ・熱利用システム」で重点的に開発する技術項目は以下の通り(図2)。「効率火力発電・次世代送配電技術」では、CO2排出量の少ない高効率な次世代の火力発電設備、導入拡大が期待される再生可能エネルギー発電設備の協調制御技術、超電導技術などを活用した電力損失の少ない次世代送配電システムなどの開発に注力する。
「コージェネ・熱利用システム」は、熱分野で省エネやエネルギーの有効活用に貢献する技術に焦点を当てた。メインとなるのは発電時に発生する熱を活用してエネルギー効率を高める「コージェネレーションシステム」のさらなる普及に向けた効率向上やコストダウンだ。この他、蓄熱や熱輸送など特定エリア内の熱利用率を向上させる技術などを重要項目として挙げている。
IoTを重要技術に
今回の改訂の2つめのポイントが、部門横断の重要技術の1つとして新規に「革新的なエネルギーマネジメント技術」を設置した点だ。これは「IoT(Internet of Things)などの新技術、分散電源や需要機器の統合制御技術など、社会全体でエネルギーの最適利用を図る技術」と位置付けている。分散電源の導入拡大や、地域単位でのエネルギーマネジメントが進んでいるなどの背景を受け、従来の「次世代エネルギーマネジメントシステム」より広い概念でエネルギーマネジメント関連技術を包含できるようにしている。
具体的な開発項目としては、HEMS、BEMS、CEMSなどの各種エネルギーマネジメントシステム、さまざまな設備機器からセンシングで得た情報をネットワークを通じてリアルタイムに取得・解析するといったIoT関連技術、デマンドレスポンス技術などが挙げられている。
なお、こうした技術開発はデータ解析や各種アプリケーションなどのソフトウェア開発がメインになるとしている。また、将来エネルギーマネジメント技術は、エネルギー使用者(需要側)ではなく、サードパーティーによる新たな省エネビジネスとして利用されていく可能性も高い。そのため、技術開発の骨格は実用領域に近いものである必要があり、こうした状況に沿った技術開発支援スキームを整備することが重要になるとしている。
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