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夏と冬の熱を地下の帯水層に溜めて空調に、大阪の中心部で35%の省エネ効果:自然エネルギー(2/2 ページ)
JR大阪駅の北側に広がる再開発地域で、日本初の「帯水層蓄熱利用」の実証事業が10月に始まる。夏と冬に空調から排出する暖熱と冷熱を地下の帯水層に溜める方式で、季節を越えて冷暖房に利用する試みだ。空調のエネルギー消費量を35%削減できて、大都市のヒートアイランド現象も緩和できる。
2022年の街びらきに合わせて導入
帯水層蓄熱利用による省エネ効果を事前に試算した結果では、床面積が3万平方メートルのオフィスビルの場合に、一般的なヒートポンプによる空調システムと比べてエネルギー消費量を35%削減できる(図6)。空調のエネルギー消費効率を示すCOP(消費電力に対する熱・冷熱量)は冷房時に5.1、暖房時に5.9になる見込みで、一般的なヒートポンプ空調の4〜6倍に向上する。帯水層の蓄熱効率は80%を想定している。
大阪市の中心部は地上にビルが密集して冷暖房の需要が大きい。一方で地下の浅い層に大量の地下水が存在しているため、帯水層蓄熱利用のポテンシャルが高い。大阪市が地盤のデータをもとに250メートル四方単位のポテンシャルを推計したところ、市内の西側を中心に高いポテンシャルを示した(図7)。その中には「うめきた2期区域」を含む梅田エリアも含まれている。
「うめきた2期区域」では2014年度から国土交通省が支援するモデル事業として「うめきた2期区域エネルギー構想」が始まっている。大阪市が代表になって、関西電力、大阪ガス、NTT西日本が共同で取り組む。エネルギーの地産地消を目指す長期構想で、実現に向けて2つの先行プロジェクトを実施する計画だ。そのうちの1つが「大阪らしさを活かした創蓄省エネモデルの構築」である(図8)。
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