卸市場を活用した電力取引で需給調整、前日と当日で取引の仕組みが違う:電力自由化で勝者になるための条件(18)
需給管理は電力事業に独特の業務で、常に需要に見合った電力を調達して供給する必要がある。調達方法の1つは卸市場を利用することだが、前日に取引する市場と当日に取引する市場では売買の方法が違う。それぞれの取引方法に対して運用体制とシステムの整備が欠かせない。
連載第17回:「小売電気事業者に欠かせない需給管理の業務、外部委託も有効な選択肢」
電力の取引には2通りの方式がある。1つは需給管理システムから卸電力取引所のシステムに自動連携する方式、もう1つは取引所が運営するシステムに直接入力する方式である。いずれの方式でも、翌日・当日の計画をもとに需給管理システムで調達電源を割り当てた後に、過不足があれば取引所を利用する流れになる。
現時点では「スポット市場」と「1時間前市場」の取引に対応する必要があるほか、今後は「先物取引市場」にも対応しなくてはならない。業務面とシステム面の両方で追随するために、将来を見越してシステムを準備するのが望ましい。スポット市場と1時間前市場への入札連携や約定情報の自動取り込み、取引の精算処理などを実行する仕組みが必要となる。
スポット市場(1日前市場)は翌日に受け渡しする電力の取引を行う市場で、1日を30分単位に区切った48商品について取引ができる(図1)。約定方式は入札の締め切りまでに価格と量を指定する「ブラインド・シングルプライス・オークション」となる。
このオークションでは入札した価格ではなくて約定した価格で電力を取引する。例えば1kWh(キロワット時)あたり9円で売りの入札を出した場合でも、約定価格が14円であれば14円で売ることになる。ブラインドであるため、入札時に他の参加者の入札状況が見えないようになっている。
一方の当日市場(時間前市場)では、スポット市場で翌日に受け渡しする電力の取引が実行された後に、発電不調や需要急増が起こった場合に発生する不足分を調達できる。約定方式は証券取引と同様の「ザラ場」を採用しており、他の参加者の入札状況を確認しながら取引を実行できる(図2)。取引の単位はスポット市場よりも小さい100kW(30分の電力量では50kWh)となる。
2016年4月の小売全面自由化後は市場が24時間365日オープンしているため、運用体制に加えてシステムの自動化などを検討する必要がある。夜間や休日にどのような運用体制をとるかは、自社の取引量やインバランスの発生頻度を考慮したうえで、全体の運用コストも加味して決定することになる。
連載第19回:「小売電気事業者に求められる計画策定業務、システムで効率化を図る」
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