電車の回生電力で小さな駅を省エネに、JR東日本が採用の蓄電システム:省エネ機器
三菱電機は電車がブレーキをかける時に生まれる回生電力を、小規模な駅でも照明や空調に活用できるシステムを開発した。蓄電池を併設するシステムで、負荷容量が少ない小さな駅への導入にも対応した。既にJR東日本の新津駅(新潟県新潟市)への採用が決まっている。
三菱電機は小規模な駅でも余剰回生電力を有効に活用できる「駅舎補助電源装置(S-EIV)蓄電タイプ」をこのほど製品化した。JR東日本の新津駅(新潟県新潟市)への採用が決まっており、2017年春から運用を開始する予定だ。
回生電力は、電車がブレーキをかける時にモーターが発電機として動作することで発生する電力。駅舎補助電源装置は、付近を走行している他の電車だけでは消費しきれない余剰分の回生電力を駅の電気設備(照明や空調、エレベーターなど)で利用するシステムとして、三菱電機が世界で初めて(同社)製品化し、2014年から納入を開始した。
しかし、従来の装置は、電気設備の多い地下鉄駅や大規模駅に向けた200kW(キロワット)の大出力となっているため、負荷容量が50kW以下の小規模駅では大半の回生電力が使用できずに無効となり、省エネ効果が少なくなるという課題があった。今回製品化した駅舎補助電源装置は、今まで無効となっていた回生電力を蓄電池に充電し、余剰回生電力のない時に供給することで電力を無駄なく使用できるなど、鉄道システム全体の省エネに貢献する。
電車からの余剰回生電力(200kW)を取り込み、50kWを駅に供給。残り(最大150kW)を蓄電池に充電する。さらに余剰回生電力がない時には蓄電池から電力を駅に供給することにより、負荷容量50kWの小規模駅で、一日最大500〜600kWh(キロワット時)の省エネが可能だ(図1)。
また、現行品と同一筺体に、従来の地絡(絶縁の劣化または損傷によって金属製筐体を通じて、電流が大地に流れてしまう現象)検出回路などの機器に加えて、蓄電池の制御機器を収納するなど小型化を図った。さらに配線作業や保守点検が筐体前面からでき、保守性や設置場所の自由度を確保するなど高い操作性・保守性を維持している。
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