火力発電の稼働率をIoT×AIで改善、東京電力と三菱日立のノウハウを組み合わせ:電力供給サービス(2/2 ページ)
電力会社とプラントメーカーによる火力発電設備の運用支援サービスが始まる。東京電力フュエル&パワーと三菱日立パワーシステムズが提携して、国内外の火力発電所を対象に新サービスの事業化に乗り出した。最先端の情報技術を駆使して稼働率を高め、燃料費とCO2排出量の削減を支援する。
国内最大の火力発電所でもIoTを導入
東京電力FPはIoTを活用したGE製の設備管理システムを導入するプロジェクトも並行して推進していく。千葉県にあるLNG(液化天然ガス)火力発電所では国内最大の「富津(ふっつ)火力発電所」から導入を開始する計画だ(図3)。
富津火力発電所で最新鋭の4号系列にGE製のシステムを導入して、発電設備に設置したセンサーから送られてくる情報をもとに運転状況を監視する。IoTを駆使して発電設備を効率的に運用する「デジタル・パワー・プラント」の国内初の試みとして取り組む。
一方で東京電力FPは福島県内に最先端の石炭火力発電所を建設するプロジェクトを推進中だ。石炭をガス化してから発電する高効率の発電設備で、10月中に県内2カ所の火力発電所の構内で建設工事を開始する(図4)。このプロジェクトで採用する石炭ガス化複合発電設備はMHPSが納入する予定になっている。両社で新たに手がけるIoTとAIを駆使した運用支援の仕組みも導入する可能性がある。
東京電力グループは2014年1月に策定した「新・総合特別事業計画」の中で、発電・送配電・小売事業の長期戦略を打ち出した。火力発電事業を担う東京電力FPは燃料の調達から発電設備の運用までを一貫して手がけるサプライチェーンを展開して、コスト削減を進めることが戦略の柱になっている(図5)。
さらに2015年3月には中部電力と合弁でJERA(ジェラ)を設立して、国内の火力発電所の運営を除く全事業をJERAに移管した。JERAは2030年までに海外の発電事業を現在の3倍以上の2000万kW(キロワット)に拡大する一方、国内でも発電所の新設・リプレースの規模を1200万kWに増やす計画だ(図6)。
東京電力FPは各分野の有力企業と連携しながら、国内外の火力発電事業でリーディングカンパニーの地位を強化していく。新たにIoTを駆使した運用支援サービスを開始して、他社が運転する火力発電設備も事業の対象に加える。
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