世界最大のCO2フリー水素製造を福島県で、仕様検討が始まる:自然エネルギー
政府が進める福島県を再生可能エネルギーと水素エネルギーのモデル地域として発展させる「福島新エネ社会構想」。この構想における注目プロジェクトの1つである、世界最大規模の水素エネルギーシステムの開発に向けたが事業可能性調査が始まった。東芝、東北電力、岩谷産業の3社が共同で実施するもので、システムの仕様なども含め、2017年9月までに調査結果をまとめる予定だ。
東芝、東北電力、岩谷産業の3社は、福島県における世界最大規模の水素エネルギーシステムの実現に向け、事業可能性調査を開始する。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「水素社会構築技術開発事業/水素エネルギーシステム技術開発」に共同提案し、2016年9月29日に採択を受けた。
政府は福島県を再生可能エネルギーと水素エネルギーのモデル地域として発展させる「福島新エネ社会構想」を進めており、2016年9月上旬にその骨子が固まった(関連記事)。骨子は「再エネの導入拡大」「水素社会実現のモデル構築」「スマートコミュニティの構築」という3つの柱で構成されている(図1)。今回3社が事業可能性調査を開始した水素エネルギーシステムは、この中の「水素社会実現のモデル構築」を担うものである。
福島新エネ社会構想では、福島県内への再生可能エネルギーの導入を拡大も目指す。一方、再生可能エネルギーは天候によって出力が大きく変動する。こうした出力変動の吸収を目的に蓄電池の活用も広がっているが、同構想ではこうした調整力として水素を活用する。
今回3社が調査を開始する水素エネルギーシステムは、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを中心とした電力を活用し、福島県内に設置する水素製造装置で水素を製造・貯蔵する。再生可能エネルギーを活用して水素を製造しつつ、同時に電力系統の安定運用にも貢献するシステムの実現を目指す方針だ(図2)。水素製造装置は1万kW級と世界最大規模を計画している。
福島新エネ社会構想の目的にはこうした水素の製造・貯蔵だけでなく、その後の効率的な利活用までも含まれている。貯蔵した液体の水素は、東北エリア内外にも供給する計画だ。3社は水素エネルギーの運用、電力系統側制御、液体水素需要予測などの複数の関連システムが協調する新たな制御システムを開発し、水素製造量と水素発電量、および水素ガス供給量の最適運用を目指す計画である。運転開始の目標は、2020年の「東京オリンピック・パラリンピック」だ。
3社は今後、水素エネルギーシステムの構成および仕様の検討と、事業可能性を調査を進め、その結果を2017年9月までにまとめる方針だ。
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