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地域を越えて電力を取引しやすく、連系線の運用ルールを改正へ:動き出す電力システム改革(71)(2/2 ページ)
日本では地域ごとに送配電ネットワークが分かれていて、地域間でやりとりできる電力の容量に制限がある。地域間をつなぐ連系線の容量を割り当てるルールは新規参入の事業者には不利な形になっている。各事業者が公平に連系線を利用できるように、有料のオークション方式に変更する方向だ。
オークションで空き容量を割り当て
容量の限られる連系線を数多くの事業者が効率的に利用し合う体制が望ましいことは言うまでもない。しかし現在は「先着優先」で容量を確保できるルールになっていて、電力会社が大半を占有している(図4)。新規参入の小売電気事業者が地域を越えて電力を調達しようと思っても、連系線に空き容量がないために断念するケースが発生してしまうわけだ。
そこで政府の委員会では欧米の先進国の事例を参考に、市場原理に基づく連系線の利用ルールを提案する方針だ。現在のところ連系線の利用料は無料だが、有料に変更して入札によるオークション方式で容量を割り当てる案が有力である(図5)。
有料のオークション方式に変われば、必要性の高い電力から連系線を利用できる仕組みになる。各地域の需給状況に見合った運用体制を作りやすくなり、特定の事業者が過剰に連系線の容量を確保する事態も防げる。
ただし実施にあたってはオークションのシステムを整備する必要があるため、短期間で導入することはむずかしい。早くても2018年度からの実施が現実的だ。オークションを実施する主体になるのは、連系線の運用を含めて全国レベルの需給調整を担う電力広域的運営推進機関である(図6)。
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