メガソーラーは豪雪地帯でも十分に発電、弘前市が実証結果を公表:太陽光(2/2 ページ)
豪雪地帯でも対策を施せば太陽光発電事業は可能なのかーー。その可能性を検証するために青森県弘前市は実証事業を実施しており、このほどその実績を公表した。想定の計画値より16%多い発電量を記録し、豪雪地域でも十分な発電量を確保できたとしている。
積雪しても十分に発電
実証で利用したメガソーラーは、2015年7月から稼働を開始。弘前市はそこから1年間の発電量などの運用実績を公表している。なお、事前の試算では積雪を考慮し1〜3月の計画発電量をゼロと見込んだ。その上で事業化が可能と考えられるスキームにより実証を行っており、この試算で想定される年間発電量は400世帯分の電力に相当する約140万kWh(キロワット時)を見込んでいた。
しかし実際の運用実績では、当初発電量をゼロと見込んでいた冬期でも、モジュール上に積雪があっても日照が2〜3時間あれば、雪は滑り落ち発電を開始した。冬期間は日射量の低下や積雪などで発電量は落ちるが、ある程度の発電量は見込めることが分かった。これにより実際の発電量は当初の計画値の116%となっている(図3)。
2015年度の積雪による具体的な影響は、年間発電量の約2.4%程度だったとしている。また、同年度の1〜2月の日射量及び積雪量は平年より少なかったが、積雪の多い年でも2.5〜3.5%程度の影響に収まる見込みとしている。
一方、積雪が地表面からモジュール上にまで達した場合には雪が滑り落ちなくなり、モジュールや架台の破損、発電量の低下を招く可能性があるため、除雪を行う必要がある。2015年度は2月中旬に積雪が1.8メートルに達したため、除雪を1回のみ行った。
日射量について弘前市と東京都を比較した場合、夏季はむしろ弘前市のほうが日射量が多く、年間平均にすると東京都と比較しても3.3%少ないだけという結果だった。これらの結果から豪雪地帯でも日射量が多く発電効率の良い春〜夏季は十分な発電量が確保でき、さらに冬季においても積雪対策を考慮したパネル設置や、監視システムにより十分な発電が行える。弘前市はこうしたデータから、豪雪地域においても太陽光発電の導入は可能であることが分かったとしている。
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