航空機も燃料電池へ、4人乗りで最長1500キロメートル:蓄電・発電機器(2/2 ページ)
ドイツの国立航空宇宙研究センターが燃料電池で飛ぶ4人乗りの航空機の飛行に成功した。低温で動く固体高分子形の燃料電池と水素格納装置を搭載して、水だけを排出しながら最長1500キロメートルを飛ぶことができる。最大出力は80kWで、離陸時や上昇時には蓄電池から電力を補給する。
最大19人の乗客を運ぶ近距離タイプを実用化へ
HY4の最高速度は時速200キロメートルで、巡航速度は時速145キロメートルで飛行する。機体の総重量は最大で1500キログラムになり、速度や高度によって750〜1500キロメートルの距離を飛ぶことができる(図4)。
燃料電池を中核にした駆動システムには、水素格納装置のほかにリチウムイオン蓄電池を備えている。離陸時や上昇時に最大の電力を必要とするため、燃料電池に加えて蓄電池から電力を補給できるシステムだ。
飛行中は燃料電池の内部で水素と酸素を反応させて、電力を作りながらモーターを駆動する。機体から排出するのは水だけで、通常の航空機のように大量のCO2(二酸化炭素)を排出することはない。燃料の水素を再生可能エネルギーから作れば、CO2フリーのエコな航空機を実現できる。
DLRは2012年に世界初の有人による燃料電池航空機「Antares DLR-H2」のフライトに成功して以来、この分野の開発で世界をリードしてきた(図5)。4人乗りのHY4で最適なプラットフォームを開発できたことから、今後さらに燃料電池をパワーアップさせて、近距離用の商用機の実用化を目指す。
HY4をベースにした燃料電池による電動の航空機では、最大19人の乗客を運べる規模まで拡張できる見通しだ。DLRは電動の航空機の開発にあたって大手メーカーのエアバスやシーメンスとも共同プロジェクトに取り組んでいる。燃料電池を搭載したタイプを含めて電動の航空機の開発競争ではヨーロッパ勢が先行する。
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