電力産業の将来を示す「東電改革」、2017年から新事業計画に着手:電力供給サービス(2/2 ページ)
難問が山積する東京電力の経営改革に向けて、政府が新たな対策に乗り出す。新設の委員会を通じて「東電改革」の具体案を年内にとりまとめる予定だ。並行して東京電力は中長期の事業計画を作り直し、他の電力会社を含む広範囲の提携を進めながら「非連続の経営改革」に挑む。
発電・小売に続いて送配電でも提携
東京電力が取り組む「非連続の経営改革」は、7月に発表した「激変する環境下における経営方針」の中で打ち出した。競争が激化する電力産業の中で、発電・送配電・小売の機能別に他社との提携を加速させる点が重要な戦略になる(図4)。これまでに火力発電で中部電力と合弁事業を開始したほか、小売ではガス会社や電話会社と販売提携を拡大してきた。今後は送配電事業でも他の電力会社と提携を進める方針だ。
東京電力は2014年1月に国の方針をもとに、「新・総合特別事業計画(新総特)」を策定して経営改革を進めてきた。新たに国の委員会がとりまとめる改革案を反映させたうえで、非連続の経営改革を具体化させた「新々総特」を2017年の初めに策定する。その中には電力会社として世界標準になる高いレベルの生産性を達成する目標も掲げる。
経済産業省は一連の改革の目的を次のように宣言した。「福島県の方々が安心し、国民が納得し、昼夜問わず第一線を支え続ける現場が気概を持って働ける解を見つけなければならない」。東京電力が「新々総特」の実行を通じて担う責任は極めて重い。今後の原子力発電所の再稼働に影響を与えるほか、進行中の電力システム改革の成否も左右する。
すでに東京電力は電力システム改革の第3弾で実施する発送電分離(送配電部門の中立化)を先取りした分社化を実施済みだ(図5)。他の9つの電力会社も2020年4月までに送配電部門を分離することが求められている。そのタイミングで地域を越えた提携が広がる可能性は大いにある。
一方で政府は電力システム改革を「貫徹」するために必要な6項目にわたる施策の検討に着手した。検討項目には廃炉会計制度の見直しが含まれている(図6)。東京電力の廃炉費用を含めて電気料金から回収する案をまとめる予定だ。新たに始まる「東電改革」が電力産業の将来の方向性を示すことになる。
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