太陽光発電とバイオマスがCO2を減らす、古都で進む温暖化対策:エネルギー列島2016年版(26)京都(3/3 ページ)
地球温暖化対策の象徴的な都市でもある京都市では、2030年までにCO2排出量を40%削減する目標を掲げている。市民を巻き込んだ太陽光発電プロジェクトが着実に広がり、廃棄物を利用したバイオマス発電も拡大中だ。水素エネルギーの普及にも産学官の連携で取り組んでいく。
食品廃棄物から水素を高速に生産
京都府では固定価格買取制度の認定を受けた発電設備は太陽光を除くとゼロに近いのが現状だ(図8)。今後はバイオマスを中心に導入量は増えていくが、それだけではCO2排出量を大幅に削減することはむずかしい。
新たに力を入れる対策は電気自動車と燃料電池車の普及拡大だ。京都市のCO2排出量を見ると、自動車を中心に運輸部門が全体の20%を排出している。「歩くまち・京都」をスローガンに、公共交通の利用を促進して自家用車の利用を抑えていく。それと並行して電気自動車や燃料電池車を含むエコカーの比率を高める方針だ。
京都市は全国に先がけて、燃料電池車の「MIRAI」を有料で貸し出すサービスを2016年8月に開始した(図9)。市が所有する3台のMIRAIを活用して、多くの市民や観光客に燃料電池車を運転してもらうことが目的だ。今のところ燃料電池車は販売台数が少なくて価格も高い。カーシェアリングを通じて水素エネルギーの効果を広める狙いがある。
京都府でも「燃料電池車普及・水素インフラ整備ビジョン」を策定して、2016年度から10年計画で水素エネルギーの拡大に取り組み始めた。2025年度末までに燃料電池車を2万台、水素ステーションを16カ所に展開する。その目標の達成に向けて、2020年度までに府内全域をカバーする7カ所に水素ステーションを整備していく(図10)。
インフラを整備するのと並行して、食品廃棄物からCO2フリーの水素を大量に製造するシステムの開発に取り組む計画だ。地元の立命館大学が研究開発を進めている微生物を利用した水素生産プロセスの実用化を目指す(図11)。
立命館大学の研究グループは、食品廃棄物に含まれるでんぷんなどを食べて水素を発生する微生物を発見した。温度が60〜100℃の状態で生育する微生物で、一般的なメタン発酵方式と比べて700〜1000倍の速さで水素を生産できるメリットがある。
京都府と立命館大学は府内の南部地域を対象に、食品廃棄物を排出する企業などと共同で事業化に向けたポテンシャル調査を2016年度内に開始する予定だ。食品廃棄物の回収スキームを含めて効率的な水素生産プロセスを構築できれば、バイオマスからCO2フリーの水素を大量に製造して供給することが可能になる。
2015年版(26)京都:「ようやく太陽光発電が増えてきた、竹を燃料にバイオマス発電も進む」
2014年版(26)京都:「古都にも再生可能エネルギーを、スマートな町家を起点に普及を図る」
2013年版(26)京都:「京都議定書の誕生の地、伸び悩む再生可能エネルギーを21倍に」
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