高原に集まったベンチャー企業が電力の小売へ、森のエネルギーを地産地消:電力供給サービス(2/2 ページ)
長野県の高原で展開するテレワークタウン計画から電力の小売事業が始まる。オフィスをシェアする東京のベンチャー企業3社が共同で新会社を設立した。地域で発電した再生可能エネルギーの電力も加えて、県内の企業や公共施設、家庭にも供給する。2017年2月に小売事業を開始する予定だ。
高原の日射量が発電量を増やす
電力の小売事業に乗り出した3社は東京に本社があるベンチャー企業で、人材を拡充するために富士見町のシェアオフィスに拠点を広げた。3社のうち「elDesign」は2014年に設立して、地域エネルギー事業の立ち上げ支援サービスを提供している(図3)。電力の小売事業に必要な電源調達や需給管理の代行も請け負う。
そのほかの2社は「デジタルワレット」と「プライムスタイル」で、IT(情報技術)を活用した決済サービスやWebシステムの開発事業を手がけている。3社の技術やノウハウを組み合わせて、電力の小売事業を中核に新しい地域サービスを展開していく計画だ。
一方で富士見町は2012年に第3セクター方式で「富士見メガソーラー」を設立して太陽光発電事業を進めてきた。2013年11月には発電能力が2MW(メガワット)の発電所の運転を開始している(図4)。
富士見町がある長野県の南部は全国でも有数の日射量が豊富な地域だ。メガソーラーの発電量は2015年度に328万kWh(キロワット時)に達した。設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は18.7%になり、国内の標準値13%を大きく上回っている。
この発電量は一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して910世帯分に相当する。富士見町の総世帯数(5900世帯)の15%をカバーする電力になる。固定価格買取制度による売電収入は2015年度に1億3100万円にのぼった。富士見町には6400万円の収入が入り、町の財政の改善に生かせる。
富士見町は再生可能エネルギー事業とテレワークタウン計画の両輪で地方創生に取り組んでいく。
関連記事
- エネルギーの地産地消で町が変わる、自治体が電力の小売に乗り出す
電力会社を頂点とする従来の市場構造を転換する試みが全国各地に広がってきた。自治体が主導して再生可能エネルギーを増やしながら、同時に地域内で消費できる循環型のエネルギー供給システムを構築する。4月に始まる全面自由化に向けて、自治体が出資する小売電気事業者も続々と生まれる。 - 電力の8割を自給自足する先進県、小水力発電と木質バイオマスが活気づく
水力発電が盛んな長野県では電力需要の8割以上を再生可能エネルギーで供給できる。2017年度に自給率100%を目指して、農業用水路に小水力発電所を拡大中だ。森林資源を生かした木質バイオマスによるガス化発電、牧草地やゴルフ場の跡地を利用した巨大なメガソーラーの建設計画も始まった。 - 電気料金に影響する託送料金の見直し、電力の地産地消を促す体系に
2020年度に実施する発送電分離に向けて、送配電ネットワークの費用負担の見直しが始まった。新たに発電事業者にも負担を求める方向だが、送配電ネットワークの負荷が小さい分散型の発電設備などは負担率を低く抑える。懸念点の1つは原子力発電で、送配電の料金を上昇させる可能性がある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.