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再生可能エネルギーを100万kW創出、ため池や水道管でも発電エネルギー列島2016年版(28)兵庫(1/4 ページ)

兵庫県の再生可能エネルギーの導入量が順調に拡大中だ。わずか2年半で100万kWを超える発電設備が運転を開始した。ため池の水上やダムの壁面でメガソーラーが相次いで稼働する一方、下水処理場にはバイオガス発電が広がる。水道管を流れるエネルギーを利用した小水力発電も始まった。

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 兵庫県には4万近い数の農業用ため池があって、全国で最も数が多い。平坦な水面に太陽光パネルを設置した水上式のメガソーラーが続々と動き出している。内陸部の加東市では3カ所のため池で、2015年に水上メガソーラーが相次いで稼働した。

 その中で最も新しい「加東市屋度(やど)太陽光発電所」は、地元の自治会が所有する5万平方メートルを超えるため池の水面を利用して、8000枚にのぼる太陽光パネルを浮かべたメガソーラーだ(図1)。


図1 「加東市屋度太陽光発電所」の太陽光パネル(上、画像をクリックすると拡大)、設置工事の様子(下)。出典:コムシスホールディングス

 発電能力は2MW(メガワット)で、年間に210万kWh(キロワット時)の電力を供給できる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して580世帯分に相当する。通信インフラの建設事業を全国で展開するコムシスグループが6億円を投じて建設した。

 水上に太陽光パネルを設置する作業は陸上と比べて手間がかかる。そこで太陽光パネルを浮かべるフロートとパネルを陸上で組み立ててから、クレーンで水面まで運んでワイヤーで岸に固定する施工方法を取り入れた。水上の工程を減らして設置作業の効率化を図るためだ。

 加東市の西側にある姫路市でも、「焼野池(やけのいけ)水上太陽光発電所」が2016年7月に運転を開始している。3万平方メートルを超える広さのため池の水面に、6700枚の太陽光パネルを設置した(図2)。


図2 「焼野池水上太陽光発電所」の全景(画像をクリックすると拡大)。出典:二川工業製作所

 太陽光パネルを浮かべるフロートには、水上式のメガソーラーに最も多く採用されているフランスのシェル・テール社の製品を採用した。発電能力は1.7MWで、太陽光発電の標準的な水準だと年間に200万kWh程度の電力を供給できる。兵庫県内で建設機械や産業用ロボットを製造する二川工業製作所が環境分野の新規事業として取り組んでいる。

 このほかにも近隣の小野市では発電能力が16MWに達する日本で最大の水上メガソーラーの建設プロジェクトが始まっている。面積が24万平方メートルもある農業用ため池の水上に建設する計画で、2017年の夏に運転を開始する予定だ。発電事業者は全国各地にメガソーラーを拡大するオリックスである。

 兵庫県内ではダムの斜面を利用したメガソーラーも広がりを見せる。県が運営する工業用水や水道用水を供給するダムのうち、壁面が南向きの場所に太陽光パネルを設置する方法だ。2014年に最初のメガソーラーが稼働したのに続いて、2016年2月には2カ所のダムで相次いで発電を開始した。

 姫路市にある「神谷(こたに)ダム」では、3万平方メートルを超えるダムの斜面に2万枚近い太陽光パネルを設置した(図3)。発電能力は5MWで、ダムの斜面を利用したメガソーラーでは国内で最大の規模がある。年間の発電量は550万kWhを想定している。


図3 「神谷ダム太陽光発電所」の全景。出典:兵庫県中播磨県民センター

 もう1カ所のメガソーラーは加古川市の「平荘(へいそう)ダム」の斜面に建設した。設置面積は神谷ダムの斜面の半分で、6300枚の太陽光パネルで発電する(図4)。年間の発電量は180万kWhを見込んでいる。3カ所のダムで稼働中のメガソーラーの発電量を合わせると、年間に2500世帯分の電力になる。


図4 「平荘ダム太陽光発電所」の全景。出典:兵庫県東播磨県民局
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