巨大な太陽光発電所が相次いで着工、被災した農地をエネルギー供給基地に:自然エネルギー(2/2 ページ)
福島第一原子力発電所から10キロメートル圏内にある富岡町で、復興に向けた大規模なメガソーラーの建設プロジェクトが相次いで動き出した。土壌の汚染が深刻な農地にメガソーラーを建設して、農業に代わるエネルギー産業を創出する狙いだ。売電収入を地域の復興にも生かす。
県内のエネルギー自給率を2018年に30%へ
続いて2016年9月には杉内地区でもメガソーラーの建設が始まった。発電事業者は特別目的会社の「富岡杉内ソーラー」である。環境省の「地域低炭素投資促進ファンド」を運営するグリーンファイナンス推進機構のほか、シャープや芙蓉総合リースなどが出資した(図5)。
建設するメガソーラーの発電能力は25MWで、年間の発電量は2500万kWhを見込んでいる。一般家庭の6900世帯分に相当する電力になる。運転開始は2018年3月の予定だ。発電した電力は固定価格買取制度で売電して年間に約8億円の収入を得られる。この売電収入の一部も福島県再生可能エネルギー復興推進協議会に寄付する。
3カ所目の高津戸地区のメガソーラーは市民の出資を得て建設する計画で、「福島富岡復興グリーンファンド」の募集を2016年10月末まで実施した(図6)。発電事業者は地域の住民が設立した「富岡復興ソーラー」が出資する特別目的会社の「さくらソーラー」である。発電能力は30MWを予定していて、近く工事に入る見通しだ。
福島県内では再生可能エネルギーの導入を加速させるプロジェクトが数多く進んでいる。震災の被害が大きかった太平洋沿岸に新たな産業を創出する「イノベーション・コースト構想」では、太陽光発電をはじめ風力やバイオマス、水素エネルギーの導入プロジェクトを推進中だ(図7)。富岡町を中心とする一帯は重点地域の1つになっている。
2013年度に開始した「福島県再生可能エネルギー推進ビジョン」では、「原子力に依存しない、安全・安心で持続的に発展可能な社会づくり」を掲げた。2040年に県内のエネルギー需要を100%再生可能エネルギーで供給することが目標だ(図8)。当面は震災前に20%程度だった比率を2018年に30%まで引き上げる。
福島県の再生可能エネルギーで中核になるのは太陽光発電である。2018年には原子力発電所1基分に匹敵する836MW(83万6000キロワット)の電力を太陽光発電で生み出せる見通しだ。富岡町に新たに生まれるメガソーラーによって目標の達成に近づく。
関連記事
- 太陽光発電で被災地が生まれ変わる、洋上風力や地熱発電も復興を後押し
東日本大震災から5年が経過して、福島県の被災地では復興に向けたメガソーラーが相次いで運転を開始した。太陽光発電の規模は全国でトップになり、県内のエネルギー自給率は30%に迫る。洋上には浮体式による風力発電プロジェクトが拡大中で、温泉地では地熱発電も始まった。 - 再生可能エネルギー100%を目指す福島県、2015年度に26.6%まで上昇
福島県では2040年にエネルギー需要の100%を再生可能エネルギーで供給する長期ビジョンを推進中だ。第1期の3年間が2015年度で終了するが、太陽光発電の急拡大で目標の24%を大きく上回る。次の第2期では風力とバイオマスを伸ばして、2018年度に28%まで高める目標を設定した。 - 農地を転用してメガソーラーに、1万4000人の町に7800世帯分の電力
福島県の太平洋沿岸にある富岡町で大規模な発電プロジェクトが始まった。東日本大震災で被災した農地を転用して、発電能力が28MWに達するメガソーラーを建設する計画だ。富岡町が出資する発電事業者が復興支援の補助金を利用して再生可能エネルギーの導入に取り組む。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.