検索
ニュース

難航した洋上風力発電プロジェクトが前進、下関市の沖合に大型風車15基自然エネルギー(2/2 ページ)

本州の西側に広がる山口県・下関市の沖合で洋上風力発電の開発計画が進んでいる。2012年に始まったプロジェクトは地元の反対を受けて難航したが、建設に向けて準備が整ってきた。計画では陸地から約1.5キロメートルの海域に15基の大型風車を設置して、2020年の春に運転を開始する予定だ。

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena
前のページへ |       

住民の反対が根強く、景観の問題も残る

 ただし地元では当初から住民の反対が強く、現在の計画通りに実施できるかは流動的だ。特に風車から近い地域では騒音や振動による健康被害を懸念する声が上がっている。このほかに景観の問題もある。下関市では2013年に「下関市景観計画」を施行して、その対象に響灘を含む沿岸地域を指定した(図4)。洋上風力発電を実施する安岡沖も含まれている。


図4 「下関市景観計画」のゾーン区分と景観形成方針(画像をクリックすると拡大)。「行為地」が洋上風力発電の実施海域。出典:下関市景観審議会

 2016年8月に開催した「下関市景観審議会」の場で、安岡沖の洋上風力発電事業について審査した。その結果をもとに、3点の要望事項を事業者の前田建設工業に伝えている。特に風車を2列に配置することが視覚的に問題になると判断して、可能な限り1列に配置すること、2列に配置する場合には陸地から離して等間隔で設置することを要望した。

 しかし前田建設工業が11月2日に公開した準備書では、風車を2列で配置する計画は変わっていない。プロジェクトを開始した当初は風車を3列に配置して、沖合750メートルほどの至近距離に設置する予定だった。地元の意見をもとに2列の配置に変更して、陸地から2倍の距離まで離した経緯がある。一般的に準備書の内容から大きな変更が加わるケースはまれだが、環境影響評価を管轄する環境省や地元の自治体の意見によっては変更の可能性も残る。

 国内では北海道から九州まで10カ所を超える地域で洋上風力発電の導入計画が進んでいる(図5)。その中でも実証事業を除く商用ベースでは、安岡沖のプロジェクトが最も早く運転を開始する状況になってきた。地域住民の理解を得ることを含めて、国内の洋上風力発電の先駆けになる事業運営が望まれる。


図5 洋上風力発電の導入プロジェクト(2016年1月時点)。出典:資源エネルギー庁
前のページへ |       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る