自立できるバイオマスエネルギーへ、全国6カ所で事業性を評価:自然エネルギー(2/2 ページ)
地域に適したバイオマスエネルギーの利用拡大に向けて、資源の調達からエネルギーに変換して利用するまでのシステムを事業として成り立たせる点が大きな課題だ。政府は7年間に100億円超の予算を投じて全国各地のシステム構築を支援する。新たに6つのテーマで事業性の評価を開始する。
自立に必要な資源量や利用量の目安
すでに事業性を評価した例の1つに、香川県の廃棄物処理施設を対象にした混合系バイオマスの地域自立システムがある。バイオマス資源には生ごみなどの一般廃棄物や食品廃棄物のほかに、家畜のふん尿や紙くず、下水の汚泥までを含む(図6)。
このシステムでは乾式メタン発酵技術を適用して、水分の少ない紙などの廃棄物でもメタン菌を使って発酵させてバイオガスを作り出す。バイオガスを燃料に発電しながら、電力に加えて熱も供給する仕組みだ。電力と熱を処理施設内で自家消費したうえで、余剰電力を売電して収益を上げる。さらに副生物の一部は廃棄物を焼却処理する時に助燃材に利用する。
NEDOが策定した地域自立システムの導入要件には、現在のところ乾式メタン発酵に関する記述は少ない。香川県の混合系バイオマスを対象に検討した乾式メタン発酵の事業性評価の成果が次回の改訂時に盛り込まれる見通しだ。
現行の導入要件では生ごみや下水の汚泥のように水分の多い湿潤系バイオマスの地域自立システムに関して方向性を示している。メタン発酵によるバイオマス事業を実施する目安として、1日あたりの処理量が100トン以上になることを挙げる(図7)。家畜のふん尿を利用する場合には1日に25トンが目安になる。
もう1つ木質系バイオマスの方向性も導入要件の中でまとめている。年間に10万立方メートル程度の木質バイオマスを調達できることが条件で、発電規模も5MW(メガワット)を超える必要がある。運転を開始した当初の20年間は固定価格買取制度で収益が保証されるが、その後は発電で生じる熱も販売して事業性を向上させる工夫が自立するうえで必要になると指摘している(図8)。
NEDOは導入要件と技術指針の改訂を続ける一方で、事業性を評価した事例の実証プロジェクトも支援していく。2020年度まで各地で実証事業を続けながら、地域自立システムの構築に必要な要素技術の開発にも取り組む。さまざまな種類のバイオマスに対応したシステムの構築法と要素技術を整備して、バイオマスエネルギーの利用に弾みをつける。
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