送電線の火災事故の原因は「地絡」、ケーブルの接続部分で大電流が発生か:電力供給サービス(2/2 ページ)
1カ月前の10月12日に埼玉県内の地下送電線で発生した火災事故の原因が明らかになってきた。現場を通る合計18本の送電ケーブルのうち、1本だけが接続部分の内部から膨張して破裂していた。ケーブルから地面に瞬間的に大きな電流が発生して火災を引き起こした可能性が大きい。
4本のケーブルは火災で絶縁破壊に
火災現場の送電ケーブルは合計18本で6つの回線を構成している。このうち事故の発生源になったとみられる城北線3番の黒相のほかに、4カ所でも絶縁状態が破壊されていた(図4)。停止中だった1回線を除いて、5つの回線すべてに分散して絶縁破壊が起こっている。
ただし4カ所はケーブルの接続部分ではなくて、接続部分から出たケーブル本体が溶けていた(図5)。同じ洞道の中を通っている送電ケーブルのうち4回線で連続して絶縁破壊が生じる可能性は火災以外では極めて低いため、4カ所の絶縁破壊は火災が原因と推定できる。
4カ所のうち「北武蔵野線1番黒相」の破損状況を見ると、ケーブルの導体の周囲に巻かれた絶縁紙が黒く焦げていて、内側の導体も一部が溶けている(図6)。そのほかの3カ所も同様の状況で、火災によってケーブルの外側から燃えたことをうかがわせる。
ここで大きな問題が1つある。火災が原因で絶縁破壊を起こしたとみられる4カ所の中で、低い位置にある「城北線1番」には防災対策を実施していた(図7)。東京電力が古いタイプのOFケーブルを対象に2002年度から進めてきた対策で、ケーブルの周囲を防災シートでカバーしている。なぜ1回線だけ防災対策を実施したのかは不明だが、いずれにしても火災による破損を防ぐことはできなかった。早急に防災対策の見直しが必要だ。
東京電力PGは火災事故の発生元になった可能性が大きい城北線3番黒相ケーブルの解体調査を実施するほか、ケーブルの絶縁紙の性能についてもサンプリング調査を実施する。その結果をもとに、東京電力管内で類似の状況が想定される地点のケーブルや接続部分を対象に、X線による内部構造の確認を含めて同様の調査を実施する予定だ。一連の調査に基づいて十分な対策が急がれる。
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