洋上風力の「最安値」、再生エネ100%を支える:自然エネルギー(2/2 ページ)
割高なことが欠点だとされてきた洋上風力発電の競争力が、大幅に高まりそうだ。出力600メガワットの発電所が、1キロワット時当たり約5.7円という価格で落札、建造が始まる。これは火力発電のうち最も低コストな石炭火力を下回る水準だ。
未来を先取りするデンマーク
今回の洋上風力発電所は、デンマークがもくろむ長期計画を下支えする。
デンマークは北海道の半分程度の国土に、北海道とほぼ同等の人口(560万人)が暮らす農業中心の国だ。
デンマークの国土には地下資源がほとんど存在しない。地形が平坦であるため水力発電にも希望がない。このため、1993年時点では93%の電力を火力発電でまかなってきた。石炭と1981年に操業を開始した北海油田に頼っていた。
幸いにもデンマークは偏西風を受ける立地にあるため、風力発電へ積極的に投資。2012年には電力需要の33.4%をまかなうまでになった。
デンマーク議会は同年、電力について意欲的な目標を打ち出した。2020年までに電力の半分を再生可能エネルギーで生み出し、2050年には全てをまかなうというものだ。
2014年時点、既に比率は48.5%まで高まっており、目標への道筋を着実に歩んでいる。既に人口1人当たりの風力発電の規模では同国が世界第一位の地位にある。
Kriegers Flak洋上風力発電所の生み出す電力は、デンマーク全世帯の消費電力量の23%に相当するという。バッテンフォールによれば、投資額は11〜13億ユーロ(1265億円〜1495億円)になる見込みだ。
快進撃するバッテンフォール
バッテンフォールのCEOであるMagnus Hall氏によれば、同社は洋上風力発電において、世界第2位の地位にあるという。
同社は既にデンマークに電力を供給する洋上風力発電所を2カ所落札している。Horns Rev 3、Danish Near Shoreだ。Groebler氏によれば、今回のKriegers Flakと合計すると、デンマークの家庭の消費電力量の55%に相当する電力を生み出すという。この3カ所はいずれも2012年の国会決議時に候補地として挙げられていたものだ。
発電コストにおいても、同社の意欲的な姿勢が垣間見える。同社はDanish Near Shore(出力350MW)を2016年9月に落札した。落札価格0.475スウェーデンクローナ/kWh(約60ユーロ/MWh)は、本誌の調べによれば当時の世界記録。2カ月でさらに記録を伸ばした形だ。
同社によれば、Kriegers Flak洋上風力発電所が位置する面積132平方キロメートルの領域は、デンマーク、ドイツ、スウェーデン向けの洋上風力発電所を建設するために予約されている。デンマーク向けの計画は建設に向けて動き出した。スウェーデン向けは2018年までに建設が始まる見込みだ。ドイツ向けは公募前だという。
同社は風力発電の監視技術にも優位性があると主張する。既に北欧に立地する1000カ所以上を監視しており、今回はデンマークEsbjergに位置するサーベイランスセンターが監視を受け持つとした。
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