町営の小水力発電所が動き出す、大都市には最先端の下水バイオマス:エネルギー列島2016年版(30)和歌山(3/3 ページ)
和歌山県を通って太平洋へ流れる川の上流で小水力発電所が運転を開始した。流域にある町がダムの放流を利用して発電事業に取り組む。県内最大の和歌山市では下水の汚泥を燃焼させた廃熱で2段階に発電するバイオマスプラントが稼働した。風力と太陽光でも大規模な発電所の建設が続々と始まる。
沿岸部と山間部に巨大なメガソーラー
和歌山県では風力発電の導入も活発だ。固定価格買取制度の認定を受けた発電設備の規模は全国で第7位である(図9)。内陸部の広川町から日高川町に連なる山の尾根には、「広川・日高川ウィンドファーム」が発電能力20MWで2014年に運転を開始した。
海に近い印南町(いなみちょう)では、大型風車13基を配置する「印南風力発電所」の建設が進んでいる(図10)。発電能力は合計で26MWになり、2018年6月に運転を開始する予定だ。大阪ガスグループが再生可能エネルギーの電力を拡大する長期計画の一環で建設する。
風力発電に加えて太陽光発電の取り組みが急速に広がってきた。中でも和歌山市の山間部で2016年2月に運転を開始した「DREAM Solar 和歌山市」の規模が大きい。以前に関西国際空港を埋め立てる土砂を砕石した場所で、36万平方メートルの広さがある。この用地に合計で8万4000枚の太陽光パネルを設置した(図11)。
発電能力は21MWに達して、年間の発電量は2360万kWhを見込んでいる。一般家庭の6500世帯分の使用量に相当する電力になる。固定価格買取制度で関西電力に売電して、年間に8億4800万円の収入を得られる想定だ。20年間の累計では170億円に達する。この売電収入のうち3%を和歌山市の公園や緑地の整備に生かすことが決まっている。
南部の白浜町の海沿いにある県内で唯一の「南紀白浜空港」でも、メガソーラーを建設する計画がある。滑走路の脇に残っている南西向きの斜面を利用して太陽光パネルを設置する予定だ(図12)。県が事業者を公募して2.8万平方メートルの用地を貸し付ける。
このほかに北部の紀の川市では、ゴルフ場の跡地で大規模なメガソーラーの建設が進んでいる(図13)。合計で38万平方メートルの用地を使って発電能力は15MWになる。総事業費は50億円を見込んでいて、2016年11月中に運転を開始する予定だ。
太平洋に面した和歌山県は日射量が豊富で、太陽光発電に適した場所が多い。県内の全域には森林が広がっていて、バイオマス発電を開発できる余地も大きい。自然環境の保全に配慮しながら再生可能エネルギーの拡大が続いていく。
2015年版(30)和歌山:「関西に流れる電力を風力発電で増やす、騒音対策が農山村の課題」
2014年版(30)和歌山:「黒潮が流れるエネルギーの宝庫、海流発電とメタンハイドレートも」
2013年版(30)和歌山:「本州の最南部にある未開の地で、巨大なメガソーラーが次々に姿を現す」
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