ニワトリ小屋との共通点は? 効率21.7%のペロブスカイト太陽電池:太陽光(3/3 ページ)
ペロブスカイトと呼ばれる材料を2種類使った太陽電池セル。米国の研究者が開発した構造だ。原子1層の厚みからなる網を使って、2種類の材料からなるサンドイッチ構造を作成。全ての太陽光を効率よく電力に変換することに成功し、記録を更新した。
グラフェンも有効利用
図2では2種類のペロブスカイト層と六方晶窒化ホウ素層以外にもさまざまな構成要素が描かれている。
バークレー校の研究者によれば、表面電極の窒化ガリウム(GaN)とspiro-OMeTADを主成分とする正孔輸送層(HTM)、エアロジェル構造を採るグラフェン(GA)が効率向上を支えているのだという。
窒化ガリウムはセル内部との電子の輸送を助ける役割がある。従来多用されてきた二酸化チタン(TiO2)と比較して、2つの長所があるとした。1つはより太陽電池に適した表面構造を作りやすいこと。もう1つはより多くの不純物を注入しやすい(ドープしやすい)ため、電子のやり取りがスムースになることだ。
正孔輸送層は、ペロブスカイト材料内部で電子と対になって生まれた正孔を輸送する役割を持つ。
グラフェンエアロジェルには2つの働きがある。1つは水分や酸素の浸透を防ぐこと。この部分を取り除いた太陽電池セルを試作したところ、1時間程度で性能が劣化することが分かった。同時にバンドギャップの値も次第に小さくなっていく。グラフェンエアロジェルのもう1つの役割は品質の高いペロブスカイト結晶が生じる助けとなることだ。エアロジェルの極めて大きな表面積によるという。
最後に残った疑問とは
研究チームは同一の構造、組成の太陽電池セルを40枚試作した。それぞれの変換効率を測定すると、15%台(3枚)から21%台(3枚)まで散らばっており、最も多かったのは18%台(13枚)だった。平均値は18.4%。このような散らばりは、構造や製造法の最適化が進んでいない研究段階では、ごく当たり前に起こることだ。
興味深いのは、セルの完成後、光を照射し始めた瞬間から連続的に変換効率を測定した結果だ。あるセルは、照射直後の変換効率が25〜26%あり、約2分間その状態が続いた。その後変換効率が低下し、約5分後には20.8%で安定、その後、変化はなかった。
このような現象をうまく制御する手法が見つかれば、さらなる高みを狙うことが可能になるだろう。
関連記事
- 新材料で安定性を6倍に改善、ペロブスカイト太陽電池の課題に光
高い変換効率を持ち、製造コストも低いペロブスカイト太陽電池。次世代の太陽電池として実用化が期待されているが、劣化速度が早いなど、安定性に課題が残る。物質・材料研究機構(NIMS)はこの実用化課題であった劣化メカニズムの解明に成功し、新規材料を用いることで安定性を6倍に向上させることに成功した。 - 太陽電池の新顔「ペロブスカイト」、18.2%の記録が意味するもの
太陽電池の変換効率の記録がまた1つ登場した。物質・材料研究機構(NIMS)は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を受けて、ペロブスカイト構造を採る太陽電池を改良。標準面積セルで18.2%という効率を得た。開発チームを率いる韓礼元氏に研究内容の要点を聞いた。 - 原子とロールで作る「ペロブスカイト太陽電池」
急速に変換効率を伸ばしているペロブスカイト太陽電池。安価な材料を用いた薄膜太陽電池として期待されている。オランダSollianceは、量産に欠かせない太陽電池のモジュール化技術を開発。変換効率を維持しながら、モジュール面積を拡大した。開発ポイントは製造プロセスにあった。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.