日本最大の営農型メガソーラーで植物を栽培、拡大する小水力発電に光と影:エネルギー列島2016年版(31)鳥取(4/4 ページ)
冬に雪が降る鳥取県で太陽光発電の取り組みが活発だ。積雪対策として太陽光パネルを高く設置する施工法が定着してきた。農地に支柱を立てて建設したメガソーラーでは販売用の植物を栽培中だ。豊富な水量を生かして小水力発電が拡大するなか、土砂崩れで運転を停止する事態も発生した。
導水路から漏水で土砂崩れが起こる
鳥取県内で固定価格買取制度の対象になっている発電設備の状況を見ると、すでに運転を開始した中小水力発電の導入量が全国で12位に入っている(図12)。さらに2倍近い規模の中小水力発電設備が認定を受けて稼働を目指しているところだ。
山間部の急峻な地形と豊富な川の水量を生かして小水力発電の取り組みは続いていく。ただし県が小水力発電所を稼働させた日南町では、町営の小水力発電所が事故を起こして運転を停止する問題も発生した。2015年9月に運転を開始した「新石見(しんいわみ)小水力発電所」である(図13)。
もともと地元の農業協同組合が1953年に運転を開始した小水力発電所があった場所で、60年以上を経過して老朽化したために設備を全面的に更新して再生したものだ。当初は順調に稼働していたが、2016年1月の早朝に導水路から水が漏れて土砂崩れが発生した。導水路の直下の民家が土砂で流されて、1人が死亡、2人が負傷する事故を引き起こしてしまった。
経済産業省によると、導水路の水の流れが雪によってせき止められて、あふれ出した水が導水路を支えていた土壌に浸透したことが原因とみられる。その結果、土壌が崩落して土砂崩れが発生した。導水路は上部が開いているため、漏水対策を施すことが電気事業法で定められている。経済産業省は事故が発生した1週間後に、全国の事業者に向けて導水路の安全確保を徹底するように注意喚起を促す文書を発行した。
この小水力発電所は東日本大震災に伴う原子力発電所の事故を受けて、日南町が再生可能エネルギーの導入を拡大する計画の一環で建設した。悲惨な死傷事故を起こしてしまったが、十分な防災対策を施した設備で再生可能エネルギーの取り組みの継続を望みたい。
2015年版(31)鳥取:「水力とバイオマスで電力の27%を供給、地熱発電も始まる」
2014年版(31)鳥取:「太陽光と小水力に続いてバイオマスも、「森と緑の産業」が息づく地域に」
2013年版(31)鳥取:「中国山地から広がる小水力発電、日本海には巨大な太陽光と洋上風力」
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