2015年度の国内エネルギー消費量が1990年度を下回る、企業の省エネが貢献:エネルギー管理(2/2 ページ)
電力や自動車の燃料を含む国内の最終エネルギー消費量が2015年度に1990年度の水準を下回った。過去26年間で最低の水準になり、特に企業のエネルギー消費量が減っている。燃料の種別では石油と原子力が大幅に減少する一方、石炭・天然ガス・再生可能エネルギーが増加した。
CO2排出量は1990年度比で13.3%増加
2015年度の最終エネルギー消費量のうち、電力の割合は25%だった。電力の消費量は2011年度から縮小傾向に転じ、それに伴って発電電力量も徐々に減っている。2015年度の発電電力量は辛うじて1兆kWh(キロワット時)を超えたものの、2010年度と比べると11.3%も減少した(図5)。いよいよ2016年度には1兆kWhの大台を下回る見通しだ。
燃料別では原子力が縮小したが、そのほかはすべて震災前よりも増えている。過去5年間で石炭火力が12.8%増、ガス火力が22.8%増、燃料費の高い石油火力も9.2%増の状態だ。ただし石油火力は2012年度をピークに急速に減って、2016年度には震災前の水準に戻ることが確実である。
再生可能エネルギーによる発電電力量は2015年度に549億kWhに達した。2010年度から30%の増加、2005年度と比べると2倍以上の規模に拡大している。一方で水力は横ばいの状態が続き、今後も大きく伸びることはない。再生可能エネルギーと水力を合わせると、2015年度の発電電力量は1259億kWhに達して全体の12.5%を占めた。
電力やガソリンといった最終エネルギーを生産するための1次エネルギーの供給量にも変化が見られる。過去5年間では石油と原子力が減って、石炭・天然ガス・水力・再生可能エネルギーが増えた(図6)。CO2(二酸化炭素)の排出量も化石燃料の増減に合わせて大きく変動している。
エネルギーの生産・消費に伴うCO2排出量は、リーマンショック前の2007年度と震災後の2013年度がピークだった(図7)。2014年度と2015年度は2年連続で3.5〜3.6%減少している。それでも近年で最も少なかった2009年度と比べると、2015年度のCO2排出量は5%以上も多い。1990年度比では13.3%の増加だ。
特に震災以降に火力発電が急増したことで、電力のCO2排出量の削減が大きな課題になっている。電力1kWhあたりのCO2排出量を示す「CO2排出係数」は震災後に3割も上昇してしまった(図8)。2013年度をピークに下がってきたが、2030年度の目標値0.37を達成するためには30%以上の低減が必要になる。
発電によるCO2排出係数を引き下げる方法は2つある。1つはCO2を排出しない再生可能エネルギー・水力・原子力による発電量を増やす。もう1つは火力発電の効率を高めながら、CO2の回収・貯蔵・利用を進める。このうちコストや安全性を考えると、現実的な対策は再生可能エネルギーの拡大と火力発電の高効率化に絞られる。
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