海水から飲料水を省エネ製造、NEDOが南アフリカで実証:省エネ機器
南アフリカ共和国では大規模な干ばつなどの影響による深刻な水不足が大きな課題となっている。こうした課題の解決に向け、NEDOは国内事業で培った海水や再生水から飲料水を製造できる装置の実証事業を展開する。従来より30%省エネかつ周辺環境への影響が少ないのが特徴のシステムだ。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2016年11月18日、南アフリカ共和国のダーバン市と共同で、省エネルギー型の海水淡水化技術の実証事業を開始することに合意し、基本協定書(MOU)を締結したと発表した。NEDOの国内事業で確立した海水淡水化・水再利用統合システムを活用し、海水と再生水から飲料水を生産できる従来より省エネな実証設備を構築する。
南アフリカ共和国では大規模な干ばつなどの影響による深刻な水不足が大きな課題となっている。ダーバン市では一般家庭への給水制限が行われているなど、市民生活にも影響を及ぼしている状況だ。そこでNEDOは、南アフリカ共和国における水不足問題を国内事業において確立した省エネルギー型の「海水淡水化・水再利用統合システム」の導入で解決するために、システムの実証に向けダーバン市とMOUを締結した。
NEDOは、2009〜2013年度に水処理技術の実証研究である「省水型・環境調和型水循環プロジェクト」を実施し、大規模実証施設「ウォータープラザ北九州」において、「海水淡水化・水再利用統合システム」を確立した。このシステムは下水を再生処理する過程で余った水を用いて海水を希釈し、塩分濃度を下げることで、従来の海水淡水化法に比べて消費電力を30%以上削減できるという。
また、海水淡水化においては、塩分濃度が高い濃縮海水の排出による周辺海洋環境への影響が問題となっているが、同システムでは希釈した海水を淡水化することにより排水の塩分濃度を海水と同程度とし、海洋環境への影響を最小限に抑えられるのも特徴となっている(図1)。
実証では、今後3年間でダーバン市中部の下水処理場に日量6250トンの飲料水を周辺地域の海水と再生水から生産可能な設備を構築する。同時に日本国内と同じように30%以上の省エネルギー化と、周辺海洋環境への負荷低減が可能かどうかを実証する。なお、この事業はNEDO初のアフリカでの実証事業となる。
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