ニュース
石炭火力「全廃」へ、英国・フランス・カナダ:法制度・規制(3/3 ページ)
フランス、英国、カナダが石炭火力発電を廃止する政策目標を発表した。フランスは2023年、英国は2025年、カナダは2030年を目標とする。なかでも具体的な政策の内容に踏み込んだのは英国だ。英国政府は、老朽化していない石炭火力発電所を全廃する方法について、2つの政策オプションを提示。コストやエネルギー保障の観点から、国民が判断できる形とした。
既に太陽光が石炭を追い抜いた
英国は再生可能エネルギーへの取り組みが一時遅れていたものの、2015年には再生可能エネルギーへの投資額が、中国、米国、日本に次いで世界第4位となっている。例えば、太陽光発電の新設規模では、2015年に世界第4位(累積第6位)の位置にあり、風力発電では新設・累積とも10位以内を占める。バイオマス発電の成長率も高い。
このような投資は成果を生んでいる。英国政府によれば、全発電量に占める石炭火力の比率は低下傾向にある(図5)。
2016年に入ると、この傾向はさらに加速。英国の気候変動やエネルギー関連のシンクタンクであるCarbon Briefは、2016年10月に英国の石炭火力と太陽光発電について興味深い調査報告書を発表している。
調査報告書によれば、2016年4〜9月期において、英国史上初めて、太陽光による発電量が石炭火力の発電量を上回った。同期間における全発電量に対するシェアは、太陽光が5.2%、石炭火力が4.7%だった。
具体的な石炭火力廃止政策を実行に移す前の段階で、他の電力源の開発がうまく進んでいる形だ。
【更新履歴】記事公開後、図1を追加しました(2016年11月24日)。
関連記事
- 2040年のエネルギー、日本はどうなる
2040年のエネルギー動向をIEA(国際エネルギー機関)が予測した。前提となるのは2016年11月4日に発効したばかりのパリ協定だ。IEAが同11月16日に公開した「World Energy Outlook 2016」には、「石炭の時代」から、「天然ガス・風力・太陽光の時代」への転換が描かれている。だが、日本の政策目標はIEAの描く明るい未来からずれている。 - 世界初CO2を100%回収できる火力発電、米国で2017年に実証運転
米国テキサス州で建設中の「超臨界CO2サイクル火力発電システム」の実証運転が2017年に始まる。東芝と米国の3社が共同で開発を進めているシステムで、発電時に排出するCO2を循環させて高効率に発電できる世界初の技術を実装する。東芝は中核の発電機の製造を完了して米国に出荷した。 - 二酸化炭素を出さない石炭火力、実現は間に合うか
石炭火力は低コストで安定的に運用できるため、大量に導入されている。より発電効率を高めつつ、これ以上の排出が許されない二酸化炭素を削減するための10年計画が進行中だ。残る5年で一気に実証試験を進めていく。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.