火山地帯に巨大なメガソーラー、ゴルフ場の跡地で5800世帯分の電力:自然エネルギー
鹿児島県の霧島市にあるゴルフ場の跡地でメガソーラーが運転を開始した。発電能力は20MWにのぼり、一般家庭の5800世帯分に相当する電力を供給できる。日射量が豊富な霧島市ではメガソーラーの建設が相次いでいる。市は災害防止と景観保全を目的にガイドラインの運用に乗り出した。
霧島市の高原地帯で12月1日に、「鹿児島県霧島市太陽光発電所」が運転を開始した(図1)。以前にゴルフ場が営業していた30万平方メートルに及ぶ広大な土地を利用したもので、発電能力は20MW(メガワット)に達する。
年間の発電量は2100万kWh(キロワット時)を見込んでいて、一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して5800世帯分に相当する。霧島市の総世帯数(6万世帯)の1割弱をカバーする電力になる。
発電した電力は固定価格買取制度で九州電力に売電する計画だ。発電所の周辺は山林に囲まれているため(図2)、地中に13キロメートルに及ぶ送電線を埋設して電力の供給を可能にした。送電線の設置にあたって霧島市から市有地の使用許可も受けている。発電事業者は愛知県を中心に電気工事などを手がけるトーエネックで、発電・送電設備の設計・施工は自然電力グループが担当した。
鹿児島県は日射量が豊富なことから(図3)、県内にはメガソーラーが続々と誕生している。太陽光発電が活発な九州の中でも導入量は多く、特に面積の広い霧島市は市町村別のランキングで全国の上位に入る規模を誇る。現在も市内では大規模なメガソーラーの建設計画が進んでいる。
ただし活火山が多いため、建設にあたっては注意が必要になる。霧島市の南側には鹿児島湾をはさんで桜島があり、市内の北部には霧島山がある(図4)。いずれも以前から火山活動が活発で、一帯は火山灰で覆われたシラスと呼ばれる地質が特徴だ。2016年5月に降った雨の影響によって、建設工事が進んでいたメガソーラーの1つで土砂流出事故も発生している。
この事故が発生した直後の6月1日に、霧島市は災害防止と景観保全を目的に「霧島市再生可能エネルギー発電設備の設置に関するガイドライン」の運用を開始した。太陽光・水力・風力・バイオマス発電のうち、発電能力が大きい設備の新設・増設・大規模改修時に届出を求める内容だ。太陽光発電では1MW以上が対象になる。
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