地熱発電の環境アセス期間半減へ、前倒し調査事業を採択:自然エネルギー
NEDOは地熱発電所で環境アセスメントの手続期間の半減を目指した「前倒環境調査事業」を採択した。得られた知見を2017年度末頃にガイドブックとして公表し、地熱発電事業者などに広く活用してもらうことで、環境アセスメントの質を落とさずに手続期間の半減を目指す。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2016年12月2日、このほど地熱発電所で環境アセスメントの手続期間の半減を目的とする「前倒環境調査事業」を採択した。今回の事業から得られる知見は、2017年度末頃をめどにガイドブックとして公表し、地熱発電事業者などに活用してもらえるようにすることで、環境アセスメントの質を落とさずに手続期間を半減することを目指す。
現在、一定規模以上の風力発電設備や地熱発電設備を建設・増設する際には、環境影響評価法において、環境アセスメントを実施することが定められている。具体的には環境に大きな影響をおよぼすおそれがある事業を「第1種事業」(出力1万kW以上)として定め、環境アセスメントの手続きを必須化している。「第1種事業」に準ずる大きさの事業は「第2種事業」(出力7500kW〜1万kW)として規定し、手続きを行うかどうかは個別に判断することとなっている。しかし、環境アセスメントの手続きには4年程度が必要で、風力発電や地熱発電のさらなる導入普及のためには、手続期間を短縮することが求められていた。
NEDOでは環境アセスメントの手続期間の半減を目指して、2014年度から「環境アセスメント調査早期実証事業」を実施してきた。この事業では、通常「方法書手続」で調査の対象や方法が確定した後に実施している現況調査、予測・評価を「配慮書手続」や「方法書手続」に先行して、あるいは同時並行で進める「前倒環境調査」を実施する(図1)。
これまで32件(風力発電所31件、地熱発電所1件)の事業を採択しているが、今回、地熱発電の事業を追加することにより、地熱発電所で重点的に実施すべき調査項目や、合理化しても環境に影響が少ない調査項目などに関する知見の充実を図ることにしている。なお、助成先は電源開発で、事業期間は2016〜2017年度。
前倒環境調査を行うのは「鬼首地熱発電所」(宮城県大崎市)だ。1975年に東北で3番目、全国では4番目の地熱発電所として営業運転を開始し、以来40年以上の間、電力の安定供給に貢献してきた。今回、施設の高経年化などの理由によりリプレースすることとし、発電設備の総出力は現在の15MWから、リプレース後は23MW級となる予定だ。なお、既設発電所の廃止は2017年度、設備更新後の運転開始は2023年度を計画している。
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