パナソニックの水素戦略、カギは2つの燃料電池:蓄電・発電機器(2/2 ページ)
パナソニックは環境展示会「エコプロダクツ 2016」への出展に伴い、同社の水素関連事業について説明。家庭用燃料電池「エネファーム」と開発中の「純水素燃料電池」を基軸に、水素社会の実現に向けた取り組みに注力する。
「純水素」燃料電池にも注力
パナソニックがエネファームに加え、もう1つの燃料電池として将来の実用に向けた開発を進めているのが、水素のみで発電する「純水素燃料電池」だ。近年実証事例が増えてきた、再生可能エネルギーを利用したCO2フリーの水素製造とその利用を見据えたもので、現在同社では山梨県甲府市で実証を行っている。2016年11月に甲府市にある県営施設「ゆめソーラー館やまなし」に、パナソニックの出力700W(ワット)の純水素燃料電池を3台導入した。
ゆめソーラー館やまなしは、山梨県が再生可能エネルギーの活用に向け出力変動の抑制技術などの研究開発拠点として運営している施設で、太陽光発電設備と蓄電池などを活用し、施設で利用するエネルギーの自給自足に取り組んでいる。フライホイール蓄電池の運用実証を行うなど、先進的な取り組みも進行中だ。
パナソニックと実施している実証では、太陽光発電設備の余剰電力と、水素製造装置で水素を作り、その貯蔵も行っている。電力需要の増減に合わせてこの水素と純水素燃料電池で発電を行い、CO2フリーな電力をゆめソーラー館やまなしに供給するという仕組みだ。3台の純水素燃料電池は連携制御できる仕組みで、一時的に大きな電力量が必要になった場合でも電力供給が行えるようにしている(図3)。「将来、純水素燃料電池を家庭用で利用すると考えた場合、そこには高い信頼性が求められることになる。この実証ではこうした信頼性の部分を検証していく狙いもある」(小原氏)
一方、小原氏は「将来の実用が期待されているCO2フリーの水素製造およびその利用の大きな課題はコスト。経済的合理性が生まれていかなければ普及は難しい。水素の製造・貯蔵・利用までのバリューチェーン全体のコストを下げていく必要がある」と指摘。そこでパナソニックとしても純水素燃料電池だけでなく、水の電気分解による水素製造や、貯蔵の効率化に向けた将来技術の開発にも注力していくとした。
水素製造では、効率は良いがコストが高いPEM型の製造システムの貴金属削減に注力。水素の貯蔵技術では水素吸蔵合金を利用するのが一般的だが、より低コストでシステム構成も簡易な金属有機構造体(MOF、Metal Organic Frameworks)を用いた貯蔵技術の開発を目指す方針だ。
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