県営の小水力発電所の電力を高く売れる、年間で1億9000万円の収入に:自然エネルギー(2/2 ページ)
長野県は建設中の2カ所の小水力発電所の電力を新電力に売電することを決定した。いずれも2017年4月に運転を開始する予定で、合計で1750世帯分の電力を供給できる。新電力は固定価格買取制度の単価に0.5円を上乗せして買い取り、東京・中部・関西電力の管内で販売する計画だ。
長野県には20年間で16億円以上の利益
長野県の企業局は県内で14カ所の水力発電所を運転している。発電能力を合計すると9万9050kWに達する。今後は固定価格買取制度の対象になる小水力発電所を増やしていく計画で、2000年以降に初めて開発に取り組んだ水力発電事業が高遠発電所と奥裾花第2発電所である。
県南部の伊那市に建設中の高遠発電所は農業用水を供給する「高遠ダム」の直下に建設する(図5)。このダムからは1958年に運転を開始した県営の「春近(はるちか)発電所」(発電能力2万3600kW)まで10キロメートルの導水路を使って水を供給している。
新たに建設する高遠発電所では、下流の自然環境を維持するためにダムから放流している水のエネルギーを利用する。水量は最大で毎秒1立方メートルあり、ダムの取水面から発電所までは21メートルの落差になる(図6)。水車発電機には大きな落差を生かせる横軸フランシス水車を導入する。
一方の奥裾花第2発電所は県北部の長野市にある「奥裾花ダム」の下に建設中だ。ダムの直下では「奥裾花発電所」(1700kW)が1979年から運転を続けている(図7)。新設の第2発電所は既設の発電所に隣接させて、ダムからの水流を分岐して発電する方式を採用した。
この一帯は豪雪地帯で、春先には大量の雪解け水がダムに流れ込んでくる。ダムから放流する水量も多くなるため、2つの発電所に分けても十分な量を確保できる。既設の発電所は最大で毎秒4立方メートル、第2発電所では毎秒2.5立方メートルの水量を利用することが可能だ。それぞれ落差は54メートルと48メートルになる(図8)。水車発電機には同様に横軸フランシス水車を使う。
新設する2カ所の小水力発電所の電力は今後も長野県が定期的な公募を通じて売電先を選んでいく。固定価格買取制度の対象になる20年間は最低でも国が保証する買取価格で売電できる。発電所の建設にかかる総事業費は合わせて16億円強を想定している。毎年の運転維持費を考慮しても、20年間の累計で16億円以上の利益を得られる見込みだ。
すでに長野県では水力発電を中心に再生可能エネルギーの電力が県内の最大需要の8割をカバーできる状態に達している。引き続き小水力発電と太陽光発電を拡大して、2017年度には再生可能エネルギーによる電力の自給率を100%へ高める計画だ。小水力発電ではダムの水流を利用する以外にも、農業用水路に水車発電機を設置する方法で導入量を増やしていく。
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