日本の温室効果ガスの排出量が2年連続で減少、震災前の水準まで低下:エネルギー管理(2/2 ページ)
CO2を中心とする温室効果ガスの排出量が2015年度に3.0%減り、2年連続で減少したことが環境省の速報で明らかになった。東日本大震災後に排出量が増加に転じたが、5年が経過して震災前の水準に戻った。排出量の9割以上を占めるエネルギー分野で節電と再生可能エネルギーが拡大した効果だ。
再エネの比率が2020年度に20%を超える
2015年度の発電電力量を電源の種別に見ると、LNG(液化天然ガス)を燃料に利用する火力発電の割合が43.4%で最も多い(図5)。石炭火力と石油火力を加えると82.9%に達する。それでもピークだった2013年度の88.4%から5.5ポイント低下した。
一方で大規模な水力発電所を含む再生可能エネルギーが14.9%まで拡大して、1年間に2.7ポイントも上昇している。節電によって国全体の発電電力量の減少が今後も続くことと合わせて、再生可能エネルギーの比率はいっそう高まっていく。2020年度には20%を超えることが確実で、国のエネルギーミックス(電源構成)の目標値である2030年度に22〜24%は軽くクリアできそうだ。
とはいえ1kWh(キロワット時)の電力を利用するのに伴って排出するCO2(=CO2排出係数)は、震災前と比べて依然として高い水準にある。2015年度のCO2排出係数は0.534kg-CO2/kWh(CO2換算キログラム/キロワット時)で、2010年度の0.413 kg-CO2/kWhよりも3割多い(図6)。2010年度には発電電力量の30%近くをCO2を排出しない原子力で供給していたからだ。
原子力に頼らないでCO2排出係数を震災前の水準まで低下させるためには、節電の推進と再生可能エネルギーの拡大に加えて、火力発電の新設・リプレースによる発電効率の改善が有効だ。現在のところ電力会社の多くは火力発電の高効率化よりも原子力発電の再稼働に力を入れているが、想定どおりには進んでいない。発電事業の競争力の点からも火力発電の高効率化を急ぐ必要がある。
再生可能エネルギーによる電力は2012年7月に始まった固定価格買取制度を機に急速に拡大してきた(図7)。太陽光を中心に電力の買取量が着実に伸びて、2015年度には432億kWhにのぼる電力が固定価格買取制度を通じて全国から集まっている。前年から1.5倍に増えて、2016年度に入っても同様のペースで伸び続けている。
固定価格買取制度の前に運転を開始した発電設備を加えると、太陽光発電だけで3440万kW(キロワット)の規模に拡大した(図8)。大型の原子力発電所1基で最大100万kW程度の電力を供給できるため、発電能力だけで比較すると原子力34基分に相当する。全国にある原子力発電所は廃炉を決定した設備を除くと42基である。さほど変わらない規模になってきたわけだ。
太陽光発電は天候によって発電量が変動するが、電力の需要が増大する夏の暑い時期には大きな供給力を発揮する。その分の火力発電を減らすことができるため、CO2排出量の削減には効果的だ。日本が海外の先進国と比べて後れをとっている送配電ネットワークを改善すれば、太陽光を中心に再生可能エネルギーの導入量を増やして、2030年度のCO2排出量の目標をクリアすることも夢ではない。
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