東京電力がIoTに本腰、新たな収益源の確保とインフラ品質向上へ:エネルギー管理(2/2 ページ)
東京電力がIoTを活用して新事業の創出や電力システムのコスト削減に着手する。米OSIsoftと提携し、さまざま設備やシステムの情報を統合する情報基盤を構築。これを中核に、リアルタイムな運転データの分析による火力発電所の運用コスト削減など、さまざまな取り組みを実施する計画だ。こうした自社実践を重ねたシステムを他社に提供していくことで、新たな収益源を確保する狙いもある。
次世代監視制御システムに適用、2019年運用開始へ
送配電部門を担う東京電力パワーグリッドでは、実証実験中の「次世代監視制御システム」について、PI Systemを活用して2019年3月から本格的な運用を開始する計画だ。次世代監視制御システムとは、これまで複数箇所に分散していた給電所や制御所などを大規模に集中化した新しい監視制御システム。東京電力パワーグリッドが2018〜2021年度にかけて設置する予定となっている。
次世代監視制御システムでは、例えば変圧器などの制御機器からセンサーで油面や油温などの情報を収集。こうした機器のデータと送配電網を流れる電流のデータ、さらに点検記録や故障管理の記録といった、これまでは別に管理されていた設備の保全データなどをPI System上で統合していく。これにより、設備効率や業務効率を向上させ、設備保全のトータルコストが削減を目指す方針である(図3)。さらにこうして収集したデータを解析して機器の予兆保全などにも活用していく。
東京電力によると、こうした取り組みは経済産業省が設置した「電力インフラのデジタル化研究会(E-Tech研究会)」における議論の方向性とも一致した施策であるとしている。同研究会は国内の電力産業の競争力強化を目的に、IoTやデジタル化技術の活用による収益性の向上や技術の海外展開に向けた施策を議論している。経済産業省が2016年11月に設置した。
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