太陽光発電の買取価格は事業用を21円に、風力発電は3年後に19円へ:自然エネルギー(4/4 ページ)
2017年度に認定を受ける再生可能エネルギーの発電設備に対する買取価格の案がまとまった。太陽光発電は事業用が3円減の21円に、住宅用も3円減の28円に引き下げる。風力発電は2019年度まで1円ずつ下げていく。中小水力発電とバイオマス発電は大規模な設備に限定して買取価格を低減する。
大規模な木質バイオマスは3円下げる
バイオマス発電にも新しい区分を追加する。一般木材を燃料に利用する発電設備が対象で、出力2万kW以上の場合に3円減の21円に引き下げる(図10)。一般木材には製材で生じる端材のほかに、海外から輸入する木材やパームヤシ殻などが含まれる。
すでに固定価格買取制度の認定を受けたバイオマス発電設備の中で、一般木材を対象にした認定量が群を抜いて多い。特に出力が2万kW以上の大規模な発電設備の大半は一般木材を燃料に利用するケースだ。バイオマス発電では出力の大きさによってボイラーのタイプが異なり、大規模な発電設備で使うボイラーほど高効率になる傾向が見られる。
政府が集約した実績データによると、出力が2万kW以上のバイオマス発電設備の効率は想定の26%よりも高くて32%に達している(図11)。効率が高くなる分だけ発電量が多くなることから買取価格を引き下げた。このほかのバイオマス発電の買取価格は2019年度まで3年分を据え置く。
地熱発電の買取価格も2019年度まで据え置くことが決まった。そのうえで風力発電と同様に、設備をリプレースした場合の買取価格を新たに加えた(図12)。地熱発電のリプレースの方法には2種類が考えられる。1つは発電設備の全体を更新するケースで、もう1つは地下の設備を流用しながら地上の設備だけを更新する方法だ。
出力が1万5000kWを境に買取価格は分かれる。それぞれ発電設備を全面的にリプレースする場合には75%程度に、部分的にリプレースすると50%程度の買取価格になる。いずれも資本費が安く済むほかに、開発リスクが新規の場合と比べて小さくなるため、発電事業者の収益率を低く設定した(図13)。
太陽光から風力・中小水力・地熱・バイオマス発電まで、政府の委員会がとりまとめた案に対して10日間程度の期間でパブリックコメントを求めた後に、経済産業大臣が承認して新しい買取価格が確定する。早ければ2016年内に、遅くとも2017年1月中には正式に決まる見通しだ。
新しい買取価格は2017年度に認定を受ける発電設備から適用することになる。ただし買取価格を引き下げる対象のうち、風力・中小水力・バイオマス発電については半年間の経過措置を設けて、2017年9月末までは現行の買取価格を適用する。
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