日本とロシアのエネルギー協力が加速、複数の大型プロジェクトが動き出す:エネルギー管理(2/2 ページ)
2016年12月15日に開催された日ロ首脳会談。その中で交わされた8項目から成る日本とロシアの経済協力プランの中で、エネルギー分野の占める比重は大きい。こうした動きを受を受け、ロシアと日本企業の共同プロジェクトが相次いで発表された。
風力発電の導入拡大へ
再生可能エネルギー分野でも、新たな取り組みが始まる見通しだ。NEDOは2016年12月16日、ロシア連邦サハ共和国政府、ルスギドロとの間で風力発電エネルギー分野に関する意向表明書に署名した。
この意向表明書は、ロシア極東地域に点在する独立電力系統地域における風力発電の普及拡大を目的としたものだ。ロシア極東地域には約5300もの独立電力系統が存在し、電力の多くをディーゼル発電に依存している。そのため発電コストが高く、電力価格の向上が課題となっており、これが地方政府の財政負担につながっている。
そこで、風力発電システムが、発電コストの引き下げにつながる有望な技術としてロシア極東地域で注目されている。NEDOによれば同地域における導入ポテンシャルは最大300MW(メガワット)と資産されているという。一方、導入拡大に寒冷地対策を施した風力発電設備の設置や、独立電力系統の安定化に関する技術の確立が必要になる。
NEDOは2014年11月にロシア連邦カムチャツカ地方政府、ルスギドロ傘下のRAOエネルギーシステムヴォストークとの間で基本協定書(MOU)を締結し、駒井ハルテック、富士電機、三井物産を委託先とする現地での風力発電システムの導入実証を行ってきた。実証運転を2016年1〜10月まで行った結果、ウスチ・カムチャツク市での風力発電システムによるディーゼル燃料の削減量は年間約400トンと試算できたという(図3)。
今回新たに意向表明書に署名したサハ共和国は、カムチャツカ地方と同様に、独立電力系統地域が多数点在する。風力発電の高い導入ポテンシャルを持つ一方で、カムチャツカ地方よりもさらに極寒の環境下にあることなどの理由から、風力発電システムを導入するためには技術開発課題を明らかにして検討を進める必要がある。今回の移行表明書は、こうした検討の実施に向けたものだ。
NEDOでは今後、カムチャツカ地方の複数地域への風力発電システムの設置に必要となる調査に着手するとともに、サハ共和国を対象とした新たな実証事業を検討することも視野に入れ、サハ共和国政府およびルスギドロとの間で、技術課題の特定や評価を進めるための情報交換等の協力を加速させる方針だ。
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