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数字で見る電力業界3分で分かるこれからの電力業界(3)(1/3 ページ)

「電力小売業界」への就職・転職を目指す方に、急速に変化・多様化する業界動向を分かりやすくお伝えする連載の第3回。今回は業界の市場規模や電力消費量、さまざまなランキングといった数値データから電力業界を俯瞰してみる。

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電力業界の市場規模

 電力は社会生活にとって必要不可欠なライフラインであるとともに、経済活動の基盤となる重要な産業インフラの一つです。その市場規模は小売部門全体(特別高圧・高圧・低圧)で18兆円(2015年度)ほどとなり、ビジネスとしても多くの企業や雇用を支えています。また、日本におけるGDP総額である約500兆円のうち、3.6%ほどを電力小売が占めていることとなります。こうした規模を持つ電力小売市場ですが、金額が大きすぎてイメージしづらいかと思います。そこで、ここでは電力業界の市場規模を、他の業界や産業と比較してみます。

 まずは、電力小売よりも市場規模の小さい産業を見てみましょう。例えば、コンビニエンスストア業界ですが、店舗数は全国で5万5000店舗を超えており、約10兆円の市場(2015年度)となります。コンビニは今や生活にとってなくてはならないサービスへと発展していますが、それでも電力小売と比較すると半分ほどの市場規模となります。

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 次に、電力小売と同じくらいの市場規模を持つ業界・産業を見てみましょう。例えば、全国の銀行における2014年度の経常収益は16兆円ほどであり、電力小売と同程度です。そのほか、電力小売より少し規模は大きくなりますが、物流業界であれば24兆円(2012年度)、外食関連が25兆円(2015年度)の産業となっています。

 電力小売よりも市場規模の大きい産業であれば、建設関連が挙げられます。その市場は約50兆円(2015年度見込)ほどとなり、電力小売の3倍近くとなります。そのほか、医療関連では約40兆円(2013年度)、自動車関連では約60兆円(2014年度)となっており、これらは電力小売よりもかなり規模が大きい業界と言えます。

電力消費量の推移

 わが国における電力消費量は、オイルショックがあった1973年度から2007年度まで着実に増加しており、2.6倍にもなっています。こうした電力消費量の増加は、主に民生用消費(家庭・業務)によって牽引されてきました。つまり生活の利便性・快適性を追求する国民のライフスタイルの変化、世帯数の増加などの社会構造変化の影響を受け、個人消費の伸びとともに電力の必要性も高まっていったのです。また生活水準の向上などにより、エアコンや電気カーペットなど冷暖房用途の機器が急速に普及したことが電力消費量の増加に影響しています。

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 一方、業務部門の電力消費の増加は、事務所ビルの増加や経済の情報化・サービス化の進展を反映したOA機器の急速な普及などによるものです。また産業部門においては、例えば製造業では全体の生産は伸びていますが、電力消費量はほぼ横ばいで推移しています。これは、省エネルギー化や産業構造の変化(素材産業から加工組立型産業へのシフト)などが要因として考えられます。

 このように、2007年度までは日本全体でみると電力消費量は増加傾向でした。しかし2008年度から、世界的金融危機の影響により経済が低迷し、企業向けを中心に電力消費が減少に転じました。その後、2011年に起こった東日本大震災を発端に、電力使用制限令や節電目標が設定されました。これにより、2011年度は前年度より5.1%、2012年度は1.0%の減少となりました。今後に関しても、省エネ化や人口減少により電力消費量は減少傾向が続くと考えられます。ただし、より長期的な目線では、電気自動車の普及に始まり、利便さを求め身の回りの製品がどんどん電化することにより、電力消費量が増加する分岐点が訪れると思います。

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