下水汚泥を石炭火力の混焼燃料に、年間4900トンのCO2削減効果:自然エネルギー
福岡県の下水処理場で発生する汚泥を活用した新しい事業計画がスタートした。下水汚泥を燃料化し、石炭火力発電所の混焼燃料として利用するというプロジェクトだ。バイオマス資源である下水汚泥を有効活用し、石炭の使用量を削減することで、CO2排出量の削減が見込める。下水汚泥を所有する福岡県は、燃料化した下水汚泥の売却で収益を得られるメリットもある。
電源開発、月島機械、三笠特殊工業の3社は2016年12月20日、共同事業体を設立し、「御笠川浄化センター」(福岡市)で発生する下水汚泥の燃料化事業について、福岡県と事業契約を締結したと発表した。
全国の下水処理場で、処理工程で発生する下水汚泥をバイオマス資源として活用するプロジェクトが広がっている。下水汚泥は他のバイオマス資源と比較して安定的に確保しやすく、事業計画も策定しやすい。その活用方法としては、汚泥から発生するバイオガスを利用した発電事業や、バイオガスから取り出したメタンで水素製造などが挙げられる。
今回の3社と福岡県による事業では、下水汚泥を石炭火力発電所の混焼燃料として利用していくのが特徴だ。低温炭化燃料製造技術を利用し、脱水した下水汚泥を燃料化する。こうした燃料化に必要な設備の設計施工、維持管理、運営、販売までを一環して行う下水汚泥燃料化リサイクル事業である(図1)。
計画では2019年3月までに下水汚泥の燃料化施設を建設する(図2)。同時に特別目的会社を設立し、同年4月から、施設の運用および維持管理と、燃料の買い取りを開始する計画だ。計画では燃料の買い取り期間は20年間を想定している。下水処理場および下水汚泥の所有者である福岡県は、20年間にわたって売却収益を得られることになる。
建設する燃料化施設は、1日に脱水汚泥を100トン処理できるようにし、年間3万3000トンの脱水汚泥を処理する計画だ。年間に製造できる燃料は、3800トンを見込んでいる。1kg当たり14.1MJ(メガジュール)の熱量を持つ燃料になるという。燃料は電源開発が所有する石炭火力発電所で利用する計画で、下水汚泥由来のバイオマス資源を混焼することで、年間4900トンのCO2削減効果を見込んでいる。
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