日本の投資がアフリカへ、躍り出る途上国の再エネ:自然エネルギー(6/6 ページ)
英米の政府機関と米Bloombergは、発展途上国58カ国を対象とした再生可能エネルギーに関するレポート「Climatescope 2016」を公開した。発展途上国は導入規模、投資のいずれにおいても先進国を超え、地域ごとに独自の成長を見せている。日本からの投資は中東や北アフリカに集中しており、企業では九州電力が目立つ。
投資環境に優れるホンジュラス
投資に関する評価項目には、投資総額の増加率の他、地元資本の比率の高さや投資コストの低さなどが反映されている。
投資について、2.0以上の指標を得た国は、中米のホンジュラス(2.60)、中国、ウルグアイ、カリブ海のジャマイカ、南米のチリだった。最低点はアフリカのコートジボアール(0.03)。
2015年のGDPに対する投資額の比率が高かった国は、総合指数の上位10位内ではウルグアイ(8.76%)、南アフリカ(5.14%)、チリ(4.69%)、ブラジル(4.23%)、中国(3.81%)である。それ以外の48カ国にはGDPに対する投資額の比率がより高い場合があった。投資額が10億ドルを超えた国から選ぶとニカラグア(10.47%)やホンジュラス(10.06%)、ケニア(6.68%)だ。
投資する側の状況を図11に示す。興味深いのは中東・北アフリカに対する投資国だ。欧州諸国が45.1%を占める中、日本の比率が24.1%と高い。日本がこの地域に集中して投資していることが分かる。
2010年から2015年にかけて15億ドル以上の投資を行った企業は4つあり、そのうち1つが九州電力だ。残りの3つはイタリアEnel、ブラジルElectrosul Centrais Electricas、スペインAccionaだ。
温室効果ガスの排出比率が高い58カ国
クリーンエネルギー指数を算出する評価項目には、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量管理状況が含まれている。なぜだろうか。
Climatescopeが調査対象とした58カ国が、全排出量の52%を占めているからだ(図12)*6)。中国が全世界の排出量の24%に責任があることはもちろん、ラテンアメリカ諸国の比率も10%と高い。これはEU28の9%よりも多い数字だ。
途上国の国民に再生可能エネルギーを用いた安価な電力を供給することが、全世界の気候変動の対策を兼ねている形だ。
*6) Climatescore 2016が調査対象とした国は以下の通り。アジア(10カ国)はインドとインドネシア、スリランカ、タジキスタン、中国、ネパール、パキスタン、バングラデシュ、ベトナム、ミャンマー。アフリカ(22カ国)は、ウガンダ、エジプト、エチオピア、ガーナ、カメルーン、コートジボアール、ケニア、コンゴ民主共和国、サンビア、シエラレオネ、ジンバブエ、セネガル、タンザニア、ナイジェリア、ボツワナ、マラウイ、南アフリカ共和国、モザンビーク、ヨルダン、リベリア、レバノン、ルワンダ。ラテンアメリカとカリブ海諸国(26カ国)はアルゼンチンとウルグアイ、エクアドル、エルサルバドル、ガイアナ、グアテマラ、コスタリカ、コロンビア、ジャマイカ、スリナム、チリ、ドミニカ共和国、トリニダードトバゴ、ニカラグア、ハイチ、パナマ、バハマ、パラグアイ、バルバドス、ベネズエラ、ベリーズ、ペルー、ボリビア、ホンジュラス、ブラジル、メキシコ。
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