再生可能エネルギーの発電コストが下がり、買取制度から自家消費へ:2017年のエネルギートレンド(1)(4/4 ページ)
2017年に再生可能エネルギーは大きな節目を迎える。固定価格買取制度の改正によって、価格の引き下げと発電コストの低下が進む。電気料金の水準よりも低く抑えて自家消費を促し、買取制度に依存しない導入環境を確立する。営農型の太陽光発電など地域の産業と連携する試みも広がっていく。
バイオマスに続いて中小水力と地熱発電も
5種類ある再生可能エネルギーの発電設備の中で、太陽光の次に導入量が増えてきたのはバイオマス発電だ。すでに280万kWにのぼるバイオマス発電設備が運転を開始したほか、運転開始前の認定設備を加えると500万kWを超えている(図14)。現時点で運転中のバイオマス発電設備は生ごみなどの一般廃棄物を燃料に利用するものが多い。
今後は全国各地の森林にある間伐材を活用した木質バイオマス発電に加えて、海外から輸入するパームヤシ殻などの農作物残さを利用する発電設備が増えていく(図15)。パームヤシ殻はヤシの実から油を抽出した後の殻の部分を乾燥させて砕いた木質バイオマスの一種で、東南アジアから安く大量に調達できるメリットがある。
パームヤシ殻を燃料に利用した場合の買取価格は、現在のところ事業用の太陽光発電と同じ24円だ。ただし発電能力が2000kW以上になると、2017〜2019年度に認定を受けた場合には21円に下がる。それでも通常の火力発電のコストと比べて高いが、生物由来の燃料を使ってCO2の排出量を削減できる価値がある。
バイオマス発電に続いて中小水力発電の導入量も着実に伸びている。ダムの直下に発電所を建設して放流水を利用する方式のほか、農業用水路や水道管に小規模な発電設備を導入する事例が増えてきた。
最近では古い水力発電所をリニューアルして発電量を増加させるプロジェクトが各地で始まっている。典型的な例は島根県の企業局が運営する6カ所の水力発電所のリニューアルだ。運転開始から40年以上を経過した水力発電所を対象に、老朽化した設備の更新を進めている(図16)。
リニューアルしても発電に利用できる水量や落差は従来と変わらないが、設備を更新することで稼働時間が長くなって発電量が増える。合わせてFITの認定を受ければ、高い買取価格で売電できるようになる。既設の導水路をそのまま活用して発電設備を更新した場合には、買取価格は12〜25円の範囲だ。すでに火力発電の水準に近づいている。
再生可能エネルギーの拡大に向けて、残る課題は地熱発電だ。日本には世界で第3位の地熱資源量がありながらも導入量は少ない。FITの対象になっている地熱発電設備を合計しても1万kW程度にとどまっている。地熱資源の豊富な火山地帯が自然公園に指定されていて、発電設備の建設に厳しい制限があるからだ。温泉地では地元が反対するケースも少なくない。
そうした中で温泉地を活性化するために地熱発電所の建設に乗り出す地域が出てきた。阿蘇山の北側にある熊本県の小国町(おぐにまち)では、地元の住民が地熱発電所の建設を推進した(図17)。再生可能エネルギーを生かした町づくりで観光客を呼び込み、新たな雇用を創出する狙いもある。
同様の取り組みは全国の温泉地に広がり始めている。地熱発電の排熱をビニールハウスに供給して野菜や果物の栽培に利用する例も増えてきた。再生可能エネルギーの電力と熱を地産地消しながら、地域の農業や観光業を盛り上げる試みだ。
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