「関電ガス」は大阪ガスよりも割安に、電力とセットならば7%引き:電気料金の新プラン検証シリーズ(40)(2/2 ページ)
電力会社の先陣を切って関西電力が家庭・商店・工場向けのガス料金を発表した。使用量に関係なく大阪ガスよりも5%程度の割安になる。さらに電力とセットの場合には追加で2%割り引く。対抗する大阪ガスは基本料金を高くする代わりに従量料金を低く抑えた新プランを投入する。
割引率で大阪ガスの新プランも上回る
対する大阪ガスは電力の小売全面自由化を機に、電力と都市ガスのセット割引で攻勢をかけてきた。関西電力の規制料金メニューである「従量電灯A」と比べて最大で5%割り引く内容だ。2016年4月〜9月の半年間に19万件の顧客を獲得した。ところが関西電力がガス料金を最大7%も割り引く意欲的なプランを発表したため、2017年4月から「GAS得プラン」を投入して都市ガスの既存顧客を死守する(図5)。
「GAS得プラン」は従来の標準メニューと同じ体系ながら、基本料金と従量料金の比率を変更して従量料金の単価を低く抑えた。家庭向けの「GAS得プラン もっと割」では、標準家庭の月間使用量33m3の場合の料金は5119円になる。従来よりも3%安いが、関電ガスの「なっトクプラン」と比べると月額で100円ほど高い。
大阪ガスは「GAS得プラン」にも電力とセット割引を適用する(図6)。ガス料金を3%割り引く内容だが、これまで「大阪ガスの電気」で提供してきたセット割引は電気料金から3%割り引いている。加えて2年契約の場合にはプラス2%の長期割引が付いて合計で5%の割引になる。一方の「GAS得プラン」には長期割引はない。
従来の電気料金に対するセット割引と新たに「GAS得プラン」でガス料金に適用するセット割引では対象も割引率も違うため、電力と都市ガスの両方を利用する家庭にとってはメリットを比較しにくい状況になってしまった。電力とガスでは季節による使用量の変動パターンも異なる。関電ガスの「なっトクプラン」のほうが割引率の大きさと料金体系のわかりやすさで優位に立ったと言えそうだ。
都市ガスの小売全面自由化の対象は月間使用量が10万m3未満の家庭や商店、中小規模の工場や事業所が含まれている。関電ガスには月間使用量が800m3程度の飲食店などを対象にした「なっトクプランM」や、さらに使用量が多い5000m3程度の工場などを対象にした「なっトクプランL」もある(図7)。
それぞれ電力と都市ガスのセットで年間に約22万円と約93万円の割安になる。関西エリアの商店や工場の大半は関西電力と契約していることから、関電ガスに切り替えるだけでセット割引の適用を受けられる。既存の電力の顧客を他社に奪われないようにする点からも関電ガスのセット割引は有効だ。
関電ガスの提供エリアは大阪ガスと同じで、大阪市を中心に2府4県の都市部が中心になる(図8)。これまで大阪ガスが都市ガスを販売してきた730万件の顧客のうち9割以上を新たに自由化の対象になる家庭や商店が占める。関電ガスが最初の半年間にどのくらいの顧客を獲得できるか注目だ。大阪ガスが電力で獲得した19万件が1つの目安になる。
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