タピオカ製造の残りカスをバイオエタノールに、サッポロがタイ企業と:自然エネルギー
世界最大のタピオカ輸出国であるタイ。サッポロホールディングスはNEDOプロジェクトで、タイ企業とタピオカ製造の際に発生する残渣を原料としたバイオエタノール製造プラントの建設に着手する。まずは事業性評価を進め、年間6万kl級のプラント建設を目指す。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2017年1月10日、NEDOプロジェクトにおいてサッポロホールディングスとタイのInnotech Green Energy Companyがキャッサバパルプを用いたバイオエタノール製造技術の提供およびプラント設計に関するコンサルティング契約を締結したと発表した。両社は年産6万kl(キロリットル)級のプラント建設に向けた事業性評価に着手する。
キャッサバパルプとは、キャッサバイモからタピオカを抽出した後に発生する残渣(さ)。タイは世界最大のタピオカ輸出国であ、2014年実績で年間260万トンのキャッサバパルプが排出されている。今回の事業では、このキャッサバパルプを活用し、燃料として利用できるバイオエタノールを製造するという試みだ。タイでは2021年までにエネルギー使用量に占める代替エネルギーの割合を25%に高める計画で、1日当たり9000klのバイオエタノールの導入を目指している。
NEDOはキャッサバパルプを用いたバイオエタノール事業の実用化のために、タイ科学技術省国家イノベーション庁(NIA)と基本協定書を締結し、2011年度から実証事業を開始している。このプロジェクトの委託先はサッポロホールディングス(当時はサッポロビール)と磐田化学工業で、2014年4月にタイのEBP社の敷地内でプラントを建設し、2015年11月まで実証運転を行った。
従来キャッサバパルプは、繊維分を多く含むためバイオエタノールの原料として利用できなかった。しかし、サッポロホールディングスが酒類製造で培った発酵技術と知見を生かし、キャッサバパルプの原料利用を可能とする製造技術を実証し有用性を確認することができた。これによって食料と共存できる持続可能なバイオエタノール製造を実現した。
今回発表した年産6万klのプラント建設を目指すプロジェクトは、こうしてこれまでの成果を受けて実施するもの。このプラントが完成すれば、年間12万トンのCO2削減効果が見込めるという。サッポロホールディングスとIGE社と具体的な設計作業と収益性の確認を進め、その後、プラント建設について具体的な検討に入る計画だ(図1)。
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