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世界最大のCO2回収プラントが稼働、石炭火力発電のCO2で原油を40倍に増産法制度・規制(2/2 ページ)

米国テキサス州の石炭火力発電所で世界最大のCO2回収プラントが運転を開始した。発電所から排出するCO2の90%以上を回収したうえで、130キロメートル離れた場所にある油田までパイプラインで供給。地中にCO2を圧入すると、分散する原油と混ざり合って生産量を40倍に増やすことができる。

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古い油田をCO2がよみがえらせる

 今後は石炭火力発電所で回収した大量のCO2を使って、油田の生産量を大幅に増やすプロジェクトに取り組んでいく。パイプラインで油田まで送ったCO2に圧力をかけて地中に入れると、油田の中に分散する微小な原油と混ざり合って地上まで抽出できる(図4)。


図4 CO2回収・貯留・利用の流れ。出典:JX石油開発

 こうした原油の生産量を増やす方法を「EOR(Enhanced Oil Recovery、石油増進回収)」と呼び、産出量が少なくなった古い油田に適用すると増産の効果が大きい。通常の生産方法では油田に存在する原油のうち25%程度しか取り出すことができないのに対して、EORを使うと埋蔵量の60%程度まで抽出することが可能になる。

 EORには熱や化学物質、ガスや微生物を利用する方法がある。その中でもCO2を圧入する「CO2-EOR」は地球温暖化対策にも生かせるため、将来に向けて最も有効な手段と考えられている。CO2-EORでは圧入したCO2と原油が完全に混ざり合う「ミシブル」と呼ぶ状態になり、さらに膨張して地上まで排出しやくなる(図5)。


図5 「CO2-EOR」による原油の増産。出典:JXホールディングス

 CO2-EORを適用するウェスト・ランチ油田は約80年前の1938年に生産を開始して、これまでに4億バレルにのぼる原油を産出してきた。全体で1万1500エーカー(46平方キロメートル)に及ぶ面積のうち、35%にあたる4000エーカー(16平方キロメートル)を対象にCO2-EORによる増産に取り組む計画だ。

 現在の生産量は1日あたり300バレルに過ぎないが、CO2-EORを適用すると最大50倍の1万5000バレルまで増産できる。平均でも1万2000バレルの生産量を見込める一方、年間に160万トンにのぼるCO2を削減できる。石炭火力発電所が排出する大量のCO2の回収にかかるコストを原油の増産でカバーする。

 日本でも石炭火力発電所のCO2排出量を削減することが急務だ。現在のところ溶剤を使って化学的にCO2を吸収する化学吸収法が主流だが、コストの高さが課題になっている(図6)。加えて回収したCO2を貯留・利用する技術の開発も欠かせない。秋田県などには古い油田が残っていることから、CO2-EORを適用できる可能性がある。


図6 CO2分離・回収技術とコスト低減(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁
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