電力を地産地消する動きが加速、原子力に依存しない分散型へ移行:2017年のエネルギートレンド(4)(4/4 ページ)
日本の電力供給の構造が大きく変わり始めた。特定の地域に集中する大規模な発電所による供給体制から、再生可能エネルギーの電力を地産地消する分散型へ移行する。災害が発生しても停電のリスクが低く、新しい産業の創出にもつながる。特に原子力発電所の周辺地域で取り組みが活発だ。
再生可能エネルギーで自給率100%へ
長野県では太陽光発電と小水力発電の導入量が急速に増えている。2014年度には最大電力需要の79%を大規模な水力発電を含む再生可能エネルギーで自給自足できる状態になった(図14)。2017年度には自給率を100%まで高める計画で、引き続き太陽光発電と小水力発電の導入に力を入れていく。
地域の資源を生かした再生可能エネルギーで自給率100%を目指す自治体はほかにもある。震災からの復興に取り組む福島県だ。2040年度までに化石燃料を含めて県内で消費するエネルギーを100%再生可能エネルギーに転換する目標を掲げている(図15)。
震災直後の2011年度は再生可能エネルギーの比率が21.9%だったが、4年後の2015年度には26.6%まで上昇した。太陽光発電を中心に導入量を増やしながら、節電対策を広めて需要を低減させる。2018年度には自給率30%へ、2030年度には60%程度まで引き上げて100%に近づけていく。
福島県内では大規模なメガソーラーが相次いで運転を開始する一方で、住宅用の導入件数も着実に増えてきた。2012〜2014年度の3年間に、毎年6000件前後のペースで住宅用の太陽光発電設備が稼働している(図16)。全国でもトップクラスの補助金(2016年度は1kWあたり4万円)を交付して導入量を拡大中だ。
同様に再生可能エネルギーが豊富な北海道では、水素を活用して広い範囲でエネルギーを地産地消するプロジェクトが広がってきた。北海道には太陽光からバイオマスまで大量の電力を生み出せる資源が存在する。地域内で余った電力から水素を製造して、札幌市などの大消費地へ輸送して利用する試みだ(図17)。
こうして東北と北海道でも分散型の発電設備が急速に拡大していく。再生可能エネルギーの電力を地産地消しながら、余剰分を他の地域にも供給して日本全体で利用率を高めることができる。残る課題は送配電ネットワークの強化に尽きる。
分散型の発電設備を大量に接続しても安定して電力を供給できる送配電ネットワークを全国に展開する必要がある。2020年4月に電力会社の送配電部門を独立させる発送電分離を機に、国が主導する長期計画に基づいて送配電ネットワークの強化に取り組むことが求められる。再生可能エネルギーの電力を全国規模で地産地消できる時代は遠くない。
トレンド1:「再生可能エネルギーの発電コストが下がり、買取制度から自家消費へ」
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