エネルギーは太陽熱、電力を使わず野菜を自動育生:自然エネルギー(2/2 ページ)
農業ビジネスを展開するネイチャーダイン(東京都文京区)は、このほど電力などの人工エネルギーを使うことなく、太陽の熱で自活稼働する自動野菜栽培装置を開発した。
栽培に必要な資源量を大幅に削減
また、SoBiCの最大の利点は、誰でも扱えて、水の消費が完全循環構造によって無駄がなく、さらに人工的にエネルギーを作り出す必要もない点だ。従来の栽培方法では、野菜などの作物を栽培生産するには大量の水と多くの人工エネルギーが消費され、例えばトマト1個あたり平均すると約50リットルの水が必要とされているという。
また、栽培の過程においても様々な人工動力が利用されており露地栽培でも130キロカロリー以上、温室栽培の場合は約500キロカロリーの人工エネルギーが使われているという。トマト1個の水分量を約200g、食物カロリーとしては約40キロカロリー程とされているので、資源レベルから考えるとかなりの無駄や損失がある。
一方でSoBiCでの栽培では、トマト1個当たり3リットル以下の水で足りるという。人工エネルギーもかからず、作物に吸収されなかった余剰肥料などの流出で環境を汚染することもなく、全体的な資源効率としては劇的に節約・改善するだけでなく、食物カロリーを創出できることになる(図2)。
現時点のSoBiC専用の野菜カプセルのラインアップとしては、需要の高いトマトなどの果菜類と呼ばれる野菜を中心として製品開発をしているが、今後茎菜類や穀物、樹木果物にも対応できるシステムを開発する予定だ。
同社ではSoBiCの資源節約性能と機動力特性を活用して、一般家庭用に留まらず、都市農業など新たなビジネスモデルの創出や物流展開、多品種に対応するための装置の更なる高度化や製品開発を進めて行く。その上で、基盤技術(特許取得済み)のライセンス化をするなどして、多くのパートナー企業との連携や共同開発、販売協調をするなどし、可能な限り早く普及展開を図って行く方針だ。
2017年4月には、一般家庭向け量産型1号機の販売を開始する計画。価格は本体ユニット6980円(税別)、専用の野菜カプセルを890円(同)で、生育保証を付けて販売する予定。
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