電力自給率100%へ、全国屈指のエネルギー資源を生かす:エネルギー列島2016年版(39)高知(2/3 ページ)
再生可能エネルギーの資源が豊富な高知県では、電力の自給率100%に向けて官民連携の発電プロジェクトが拡大中だ。高原で風力発電の建設計画が進み、川や農業用水路には小水力発電を導入する。太陽光発電とバイオマス発電を加えて、2020年度までに再生可能エネルギーの導入量を倍増させる。
全国有数の日照時間と降水量を電力に
高知県は自然エネルギーの宝庫だ。森林の面積は県内の84%を占めていて全国で第1位の森林率を誇る。年間の日照時間は全国平均と比べて14%多く、降水量は平均値を36%も上回っている(図6)。木質バイオマス、太陽光、水力発電の資源が豊富に存在する。
太陽光発電では官民の連携による「こうち型地域還流再エネ事業」で導入量を増やしてきた。県と市町村が民間企業と共同で発電会社を設立して、発電設備を建設・運営する事業方式である(図7)。これまでに県内の7カ所に太陽光発電所を建設して運転中だ。7カ所の発電能力を合計すると10MWに達する。
典型的な例は2015年4月に運転を開始した「こうち名高山(なこうやま)ソーラーファーム」である。高知県と地元の土佐町に加えて四電工グループの高知クリエイトが45%を出資している。名高山の頂上付近に土佐町が所有する土地を太陽光発電用に貸与した(図8)。
内陸部に位置する土佐町では小水力発電所の建設計画も進んでいる。市内を流れる川に沿って約600メートルの導水路を敷設して発電に利用する計画だ(図9)。その間の落差は26メートルになり、最大で3.2立方メートル/秒の水量を使って発電する。670kWの発電能力で2018年度内に運転開始を予定している。年間の発電量は300万kWhを見込んでいて、一般家庭の830世帯分に相当する。
小水力発電を農業用水路で実施するプロジェクトも始まった。高知県内を横断して太平洋に注ぐ物部川(ものべがわ)の流域で建設中だ。川の流域に広がる農業用水路の落差を生かして、用水路を運営する地元の土地改良区が取り組む。「分水工」と呼ぶ用水路の分岐点から流れる水流で発電する方法である(図10)。
発電能力は90kWで、2016年度内に運転を開始できる見込みだ。年間の発電量は43万kWhになり、一般家庭の120世帯分に相当する。発電した電力は売却して、用水路の設備の補修費用などに役立てる。再生可能エネルギーを通じて農山漁村の活性化を図ることが狙いで、事業費の4億6800円のうち50%を国が補助した。
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