風力発電の規格を国際基準よりも厳しく、台風や乱気流に対する安全性を向上:蓄電・発電機器(2/2 ページ)
経済産業省は風力発電に関するJIS(日本工業規格)を改正した。これまで国際基準と同様に3段階の風速に対して規定していた風車のクラスに新しい区分を設けて、極限の平均風速が50メートル/秒を超える場所を対象に安全性の規定を追加した。合わせて風車が発する騒音の測定方法も見直した。
強風や乱気流で起こる風車の落下事故
ここ数年で風力発電所の事故が頻繁に発生しているが、原因の多くは台風や悪天候による強風や乱気流、落雷である。たとえば2013年3月に京都府の「太鼓山風力発電所」で発生した風車落下事故では、強風や乱気流を継続的に受けたことによる部品の金属疲労が原因だった(図4)。風車メーカーの仕様では最大60メートル/秒の風速に耐えられる構造になっていたにもかかわらずだ。
最近では大型の風車を設置して風力発電の規模を拡大する方法が一般的になっている。1基あたりの出力が3000kW(キロワット)の場合には、羽根の回転直径は100メートル前後に達する(図5)。さらに出力が5000〜7000kWの超大型風車も茨城県の陸上や福島県沖の洋上で稼働し始めている。
陸上・洋上ともに上空へ行くほど風速が速くなる傾向があるうえに、風車の羽根が大きくなるにつれて強風や乱気流の影響も受けやすい。風力発電の導入量を拡大するためには安全性の確保は不可欠で、JISに合致したシステムの導入が前提になる。今後も状況に応じてJISの規格を改正していく必要がある。
今回の改正では風車が発する騒音(音響放射)の測定方法も見直した。従来は風速が6〜10メートル/秒の条件で測定する方法だったが、新たな規定ではすべての風速に対して測定する方法に変更した。このほかに騒音の測定に必要な風速の算出方法なども設置条件に合わせて拡充した。
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