バイオガス発電で年間1億円の売電収入、下水処理コストを低減:自然エネルギー(2/2 ページ)
愛知県の東部にある下水処理場で2月1日にバイオガス発電事業が始まる。民間の資金やノウハウを活用するPFI方式を採用して、バイオガス発電設備と合わせて下水汚泥の処理施設も更新した。年間に770世帯分の電力を供給できる見込みで、売電収入の10%が県に入る契約だ。
下水熱を生かしてミニトマトも栽培中
2つの施設の整備と運営にかかる事業費は総額で96.5億円にのぼる。ただし売電収入からSPCと愛知県に配分する金額を除いた17.6億円を事業費の一部に充当する契約になっている(図4)。このため県がSPCに支払う事業費は78.9億円で済む予定だ。売電収入は想定を下回る可能性があるが、それに関係なく17.6億円を事業費に充当する契約になっている。
さらに売電収入の10%にあたる年間1000万円強の分配金が見込める。発電事業の契約期間は2036年3月までで、合わせて19年2カ月分の約2億円が愛知県の収入になる見通しだ。もし汚泥の処理量が契約で定めた範囲から逸脱した場合には、県からSPCに対する支払額を改定して調整する。
豊川浄化センターは43万平方メートルの広大な敷地の中に、下水を処理して汚泥を作る水再生ゾーンをはじめ、新たにPFI事業で建設した汚泥処理ゾーンとバイオガス利活用ゾーン、さらに太陽光発電ゾーンと植物工場ゾーンがある(図5)。
太陽光発電事業は3万平方メートルの用地を事業者に貸し付ける方式で実施している(図6)。JFEエンジニアリングなどが出資する「T&Jエコエナジー」が事業者になって2016年4月に運転を開始した。発電能力は2MWで、年間に257万kWhの電力を供給できる見込みだ。愛知県には年額で600万円の土地貸付料が入る。
一方の植物工場では下水を処理した後の放流水の熱を暖房に利用して、温室の中で年間を通じてミニトマトを栽培する(図7)。民間企業と生産者を中心に、愛知県と豊橋市、農業協同組合などがコンソーシアムを構成して、2015年度から取り組んでいる。下水の処理熱を生かして化石燃料の使用量を削減する新しい農業のモデル事業である。
このように1カ所の下水処理場の構内でバイオガス発電、太陽光発電、下水熱による暖房まで実施するケースは全国でも珍しい。下水処理場で再生可能エネルギーを最大限に活用する先進的な事例になる。
関連記事
- 廃棄物から電力を作って農業に、池の上にも太陽光パネルが並ぶ
住宅を中心に太陽光発電が活発な愛知県で、廃棄物を利用したバイオガス発電の取り組みが広がってきた。生ゴミや下水からバイオガスを生成して、電力と熱を供給するのと同時に肥料やCO2を農作物の栽培に利用する。太平洋沿岸の豊富な日射量を生かして水上式のメガソーラーも運転を開始した。 - 3種類の廃棄物をまとめてバイオガスに、2400世帯分の電力に生まれ変わる
国内初の複合バイオマス発電プロジェクトが愛知県の豊橋市で始まった。市が運営する処理場の中で、生ごみ・下水汚泥・し尿の3種類の廃棄物からバイオガスを生成して発電用の燃料に転換する計画だ。民間企業の資金やノウハウを活用するPFI方式を採用して、2017年10月に運転を開始する。 - 下水処理場が市の新財源に早変わり、消化ガスから300世帯分の電力
茨城県守谷市にある「守谷浄化センター」で消化ガスを利用したバイオガス発電事業が始まった。年間発電量は一般家庭300世帯分に相当する140万kWhを見込んでいる。同事業は自治体と発電事業者の双方にメリットがあるBOO方式を採用しているのが特徴だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.