世界需要の36%、再生可能エネで実現か:自然エネルギー(4/4 ページ)
現在、各国政府が掲げる政策目標の「2倍の水準」の再生可能エネルギーを導入する必要がある。IRENA(国際再生可能エネルギー機関)が2017年1月に発表した報告書の目標だ。同報告書では再生可能エネルギーの現状と将来を政策や技術、投資から分析した。
2:コスト構成はどうなっているのか
発電方式が異なるとコスト構成が大きく異なる。再生可能エネルギーは燃料費が不要な代わりに、初期費用(資本コスト)や管理運用(O&M)コストが高いのではないか。
このような疑問に応えるレポート「LAZARD'S LEVELIZED COST OF ENERGY ANALYSIS - VERSION 10.0」を米国の投資銀行であるLAZARDが2016年12月に発表している。
LAZARDはさまざまなシナリオに基づいて複数のLCoEの値を算出している。図B-1は「Low End」の値である*B-1)。
*B-1) IGCC(石炭ガス化発電)は発電効率が高く、発電量1単位当たりの二酸化炭素排出量が少ない高度な石炭火力。
LAZARDのレポートはIRENAよりも幅広い電力源を扱っている。左側の11種類が再生可能エネルギー、右側の7種類が化石燃料や原子力だ。
従来の発電方式では小型火力に相当するディーゼルのコストが1MWh当たり212ドルと圧倒的に高い。離島ではこの方式を多用しているため、再生可能エネルギーは離島における競争力が高いことが分かる。
ガスタービンも165ドルと高コストだ。出力を短時間に制御できる性質があるため、石炭火力などと組み合わせると柔軟な電力源を構成できる。
再生可能エネルギーでは32ドルの風力、次いで46ドルの大規模太陽光のコストが低いことが分かる。この2つは化石燃料のうち最も低コストであるガスコンバインドサイクル発電(48ドル)をも下回っている。
バイオマスや地熱、中規模の太陽光発電であっても原子力(97ドル)よりも低コストだ。
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