日本を縦断する距離、8000万人に6GW供給:電力供給サービス(1/2 ページ)
高圧直流送電(HVDC)技術を利用すれば、1000キロメートル(km)以上離れた需要地に大電力を効率よく送電できる。スイスABBはインド、米国、ブラジルの3カ所で大規模なHVDCプロジェクトを受注したと発表。なぜ送電が必要なのか、どの程度の規模なのか、プロジェクトの内容を紹介する。
数百kmから1000km以上離れた地点に大電力を送電する場合、有利なのは「交流」ではなく「直流」だ。
このように主張するのは、重電や重工業に強みのあるスイスABB。交流と比較して送電損失が少ない*1)だけではない、世界各国における実績に裏付けられたものだ。同社は「高圧直流送電(HVDC)技術」を開発し、既に全世界110以上のプロジェクト、合計12万メガワット以上(1億2000万キロワット以上)に同システムを導入している(図1)。
最新の事例もある。同社は2017年1月にインドと米国、ブラジルの3カ所で、合計8億ドル以上のHVDCプロジェクトを受注したことを発表。いずれも1000km以上離れた地点を結ぶ送電システムだ。
*1) ABBによれば、送電距離1500kmの場合、送電損失は5%以下となり、交流の約2分の1に抑えられる。
稚内−鹿児島に相当する距離を送電
インドでは電力グリッド公社(POWERGRID)から総額6億4000万ドル以上のプロジェクトを受注*2)、2019年の完成を予定する。インド中央部のライガルと南部のタミルナードゥ州パガリアを結ぶ1830kmのHVDCプロジェクトだ(図2)。世界最長クラスだという。
*2) ターンキープロジェクトとして受注したため、設計からエンジニアリング、機器供給、設置までを担う。プロジェクト全体の規模は8億4000万ドルであり、ABBのコンソーシアムパートナーであるインドBHELが残り部分を受注した。
日本の国土に置き換えると、北海道北部の稚内市から九州南部の鹿児島市までの直線距離とほぼ等しい。
タミルナードゥ州は風力発電の導入規模が大きい。風況がよく、現地の需要以上に発電している期間は北部に送電したい。風がない期間は南部の電力需要をまかなう。導入するHVDC技術は双方向送電に対応しているため、このような用途に適する。送電容量は大型の原子炉6基分に相当する600万キロワット(kW、6ギガワット)。
送電電圧は80万ボルト(V)と高い*3)。HVDCを採用するメリットとして、送電に必要な面積が少ないことを挙げた。高圧交流送電と比較して、専有面積を244平方km削減できたという。これは大阪市の面積よりも広い。
*3) インドの事例のように送電電圧が80万V以上のHVDCを、ABBは「UHVDC」と呼称している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.